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昆虫由来代替たんぱく質の投入へ、住商が手を組んだシンガポール企業の正体

飼料開発、来年めど国内投入
昆虫由来代替たんぱく質の投入へ、住商が手を組んだシンガポール企業の正体

原料となる脱水・乾燥させたアメリカミズアブの幼虫

住友商事は昆虫由来の代替たんぱく質を製造するシンガポールのニュートリション・テクノロジーズ(NT)と資本業務提携した。NTの製品を飼料の原料としてメーカーに供給し、1、2年後をめどに開発した飼料を日本市場に投入する。その後、NTと共同でグローバル展開を進める。近く出資金の払い込みが完了するが、金額と比率は明らかにしていない。

住友商事は日本の飼料メーカーにサンプル製品の供給を始めている。これを飼料に配合するイワシを原料にした魚粉の一部と入れ替え、養殖する魚やエビに与え、魚粉との違いを検証中だ。中間結果では魚粉との違いはないとしている。

アニマルヘルスサイエンス部の李建川アジアチームリーダーは「長期的に検証するとともに、寿命や成長に与える影響など昆虫由来代替たんぱく質の機能も調べたい」としている。鶏と豚の飼料やペットフード用としての供給も検討する。

NTはマレーシアで原料となるアメリカミズアブ(BSF)を養殖・加工するアジア最大規模の工場を運営している。近隣の工場や農園から出る食品残さ・副産物を飼料にBSFを養殖し、幼虫を脱水・乾燥、高品質なたんぱく質に加工する技術がある。

加工過程で油やフラス(昆虫のふんや殻くずなどが混ざったもの)が生成されるが、これを活用した化粧品や医薬部外品、化学品、有機肥料などの高付加価値製品の開発にも住友商事が取り組む。

世界的な人口増加と食の西洋化に伴い、たんぱく質の需要は2050年には05年比で約2倍となると予測されており、世界的なたんぱく質不足が懸念される。畜産・漁業・農業から得られる動物性・植物性たんぱく質では、供給には限界があり、環境負荷の低いたんぱく質が求められる。

その中で注目されるのが、昆虫由来代替たんぱく質で、主な用途は飼料やペットフードだが、将来は人間用にも加工、使用されることが期待される。世界の昆虫由来代替たんぱく質市場は20年の175億円から30年には3500億円に成長するという。

日刊工業新聞2022年9月30日

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