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次世代原発実用化へ、三菱重工が電力4社と共同開発「革新軽水炉」の全容

次世代原発実用化へ、三菱重工が電力4社と共同開発「革新軽水炉」の全容

革新炉の実用化にもサプライチェーンは欠かせない(三菱重工の革新軽水炉「SRZ-1200」のイメージ)

三菱重工業は、関西電力など電力4社と次世代の原子力発電所を共同開発する。革新軽水炉と呼ぶ安全性に優れた原子炉を2030年代半ばに実用化することを目指す。三菱重工製の加圧水型軽水炉(PWR)をベースにする。三菱重工はPWRを採用する4社と革新軽水炉についてこれまで協議し、今回コンセプトを確立した。今後は基本設計など共同開発に段階を進める。政府が8月、次世代原発の開発の検討を表明した中、実用化の動きが本格化する。

関電や北海道電力、四国電力、九州電力と革新軽水炉「SRZ―1200」を共同開発する。出力は120万キロワット級を想定。11年の福島第一原子力発電所事故を教訓にした安全機能を備える。炉心溶融が起きた場合、原子炉容器の下のコアキャッチャーという槽に燃料デブリ(溶け落ちた核燃料)を保持・冷却し、最終障壁である格納容器を防護する。

事故発生時にキセノンなどの希ガスである放射性物質の放出を防止するシステムも設置する。放射性物質が原発敷地外に拡散しないようにする。

拡大が見込まれる再生可能エネルギーとの共存のための機能も持たせる。太陽光発電など再生エネは気象条件によって発電量が変動する。革新軽水炉の出力を素早く柔軟に変動できるようにし、再生エネを含む電力供給量のバランスを保つことを狙う。

政府の検討表明で、福島第一原発事故以降停滞していた原発政策は新増設に方向転換する。今回の共同開発はその第1弾と言える。三菱重工は電力会社向けにPWR型の原発を建設してきた。PWRをベースに革新軽水炉の開発にこれまでも取り組み、電力4社とは同事故を教訓にした安全対策を中心に協議してきた。

三菱重工は革新軽水炉の30年代半ばの実用化を目標とするが、電力4社の新設計画は未定。原発新設には立地先の地元自治体の合意が必須で、革新軽水炉の安全性が判断材料になる。

日刊工業新聞2022年9月30日

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