コンビニのコピー機を深耕するシャープ、商機拡大へ期待の新用途
シャープが国内大手コンビニエンスストア向けで約6割と、設置台数でトップシェアを握るマルチコピー機の用途開拓に力を注いでいる。利用例は消費者自身が持ち込むデータの印刷や、土休日における行政サービスの利用、“推しアイドル”の写真を活用した独自グッズの制作など多彩だ。コンビニは来店客数の増加、コンテンツプロバイダーはコンテンツの販促につながり、複合的な商機が見込めそうだ。(大阪・大原佑美子)
シャープは1986年、ファミリーマート店舗にモノクロ機を設置したのを皮切りに、デジタル化やセキュリティー・利便性強化などのニーズに対応してきた。12年ごろからクラウド基盤を活用し、コンテンツプリントや企業の営業担当者向けのデータ印刷サービスなどを拡充してきた。
13年に提供開始した行政サービスは7月現在で949の市区町村が参加し、対象人口は1億1163万人で国内人口の大部分をカバーする。行政窓口時間外に住民票の写しなどの交付が可能だ。
地紋処理といった偽造防止対策が講じられていることや、行政窓口の“密”回避や業務効率化につながる点も強みと言える。シャープマーケティングジャパンビジネスソリューション社コンテンツソリューション事業統轄部パブリックプリント営業部の奥山章氏は「(8月末時点で)47・4%のマイナンバーカード交付率の拡大に伴い、今後もユーザーは増える」とみる。
同様に商機拡大の期待が高まるのは「プロバイダーとの契約を現状比2倍の40件にしたい」(奥山氏)というコンテンツプリントサービスだ。アイドルの写真やお誕生日新聞、競馬の出走表などがマルチコピー機で紙やシールに印刷できる。コロナ禍の中では無料コンテンツも提供され、有名キャラクターの塗り絵や学習用ドリルなどの印刷が急増した。
アイドルや“推しキャラ”、自身で持ち込んだ写真データなどを使い、シールやカレンダーにしてオリジナルグッズ作りを楽しむなど、ユーザーが使い方を開拓する面もある。「くじ」形式、「ランダム(ガチャ)販売」機能などで売り上げを伸ばしているプロバイダーもあるという。
家電・機器をネットワークにつなげて課題を解決するソリューションを成長分野に位置付けるシャープにとって、マルチコピー機は成功事例と言えそうだ。ただコロナ禍で消費者の在宅時間が増え、趣味のコンテンツへの関心が高まったなど、追い風に恵まれた側面もあった。今後は用途開拓を一段と進め、持続的・安定的に収益をあげられる商材として存在感を高めていけるかが問われる。
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