「EV先駆者」の日産、電動車のアフターサービスを厚くする秘密
日産自動車が電気自動車(EV)の整備技術を蓄積している。2010年に世界初の量産型EV「リーフ」を発売。販売店ではリーフの整備や修理を手がける度にノウハウを積み上げてきた。日産系列で整備士の教育を専門に手がける日産・自動車大学校では、EV整備に関する専門の講座を開設。関連資格を取得した卒業生が全国の販売店に就職し、EVなど電動車のアフターサービスの基盤を厚くしている。
「EVについて学んだことが、整備の現場でそのまま生かせる」。日産・自動車大学校の本廣好枝学長は教育内容に自信を示す。
同校ではガソリン車だけでなく、EVの整備技術を教える講座を09年に開設した。リーフを実習車両に使うなど世界に先駆けEVを投入した日産ならではの教育を展開。日産系列の販売店で蓄積されるEV整備の経験は、授業をより実践的な内容へと磨き続ける。
日産・自動車大学校ではEV整備に関する講座を2年次と4年次にそれぞれ設定し、全学生がいずれかの講座を受講する。履修者は日産社内でEV整備の技術を学んだ資格者として認定される。
また日産は電動化とともに自動運転など知能化技術の開発にも力を入れる。同校でも運転支援機能に欠かせないカメラやレーダーの調整方法などを教える授業を開催する。
電動化や知能化の技術を開発する第一線のエンジニアを講師として招き、技術のトレンドや開発の裏話に触れる機会も提供。将来、学生が実際に整備をする際に「先進技術やシステムへの理解を深めるきっかけにもなる」(本廣学長)という。
日産・自動車大学校は横浜市や京都府などに5校を展開。ここ数年は卒業生が平均で600人を超え、うち約7割が日産系列の販売会社に就職する。
一方、日産は1月に旗艦EV「アリア」、6月に軽EV「サクラ」と新型車を相次ぎ投入し、EVの品ぞろえを拡充。EVの本格的な普及を前に、09年の講座開設から実践的なEVの整備技術を学んだ卒業生が全国に広がり、アフターサービスに厚みをもたらしている。
日本では少子化などで自動車整備士の担い手不足が深刻化。アフターサービスの巧緻はブランドにも影響するため、自動車メーカー各社は整備士の確保に頭を悩ませている。今後はEV需要の拡大が見込まれ、専門的な整備技術習得への引き合いも高まることが予想される。
日産・自動車大学校には、EVなど先進技術の開発に力を注ぐ日産の車づくりの特徴を生かして学生に魅力を伝え、日産のアフターサービス充実に貢献することがより強く求められそうだ。