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産業ガス大手・日本酸素HDはいかに稼ぐ力を高めるか

産業ガス市場で世界シェア4位の日本酸素ホールディングス(HD)は、2020年10月に持ち株会社体制へ移行して以降、初めてとなる中期経営計画を策定した。26年3月期までの4カ年にエレクトロニクス分野など成長事業の拡大、脱炭素につながる技術の開発や提案などを加速させる。事業会社の戦略も鮮明化され、地域ごとの市場環境に基づく戦略を実行するとともにグループ各社のノウハウを結集し、効率的に稼ぐ力を高める。

同社は日本、米国、欧州、アジア・オセアニアのグローバル4極と、魔法瓶などを手がけるサーモス(東京都港区)で構成される。コアの産業ガス事業は、地域別の事業会社が中心となりグローバルで事業展開している。

産業ガスは顧客事業所にパイピングで直接供給するほか、液化ガスやシリンダー容器で配送するため〝地産地消〟のビジネスモデルが中心だ。日本の事業会社である大陽日酸が海外事業も統括していた体制から、持ち株会社体制に移行したことで各地域の事業会社に権限を委譲。意思決定を迅速化するとともに、執行責任を明確化した。地域ごとの戦略をHDが統括管理することで総合力を高める狙いもある。

「グループの総合力を発揮し、グローバルな産業ガスメジャーとして企業価値を高めていきたい」。浜田敏彦社長兼最高経営責任者(CEO)は、方針についてこう述べた。

現状の力はどうか。収益力の指標であるEBITDAマージン(売上高に対する利払い税引き償却前利益の比率)は、22年3月期で20・4%と決して低くない数値だが、同30%前後を示す競合の海外産業ガスメジャーに対しては見劣りする水準だ。日本酸素HDは26年3月期までにEBITDAマージンを24%以上に高める目標を示した。エネルギー高など事業環境が変化する中、モノづくりをはじめ多様な産業のニーズを適切に捉え、稼ぐ力の向上につなげられるか。ホールディングスとしての真価が試される。

日刊工業新聞2022年7月14日

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