ほぼ無借金経営のFUJIが重視する経営指標
FUJIは2021年末の自己資本比率が85・8%。固定負債約26億円に対し現金・現金同等物残高は約548億円で、ほぼ無借金経営だ。高い自己資本比率は堅持しつつ、経営指標では株主資本利益率(ROE)を重視し稼ぐ力を高めようとしている。加納淳一取締役は「預かった資金で高収益を目指すという投資家へのメッセージ」と説く。
同社は電子部品実装機(チップマウンター)では世界有数のメーカー。需要は旺盛だが研究開発費の拡大やコロナ禍が影響し、18年度に10・8%だったROEは19年度9・1%、20年度9・5%と伸び悩んだ。21―23年度の新中期経営計画では「23年度にROE10・0%以上」を目標とした。
新中計で初めて「配当性向30%以上」も掲げた。18年度が27・1%、19年度が30・5%、20年度が27・1%と従来は変動。「一貫性がないと機関投資家から指摘された」と加納取締役は話す。新目標のため21年度は配当70円と20円の増配を予定する。
「(年間の)研究開発費100億円」を目標とし、「無人化やデジタル変革(DX)を急ぐ。ロボットやIoT(モノのインターネット)の技術を生かし新事業も育てる」(須原信介社長)考えだ。実際、18年度79億円、19年度88億円、20年度90億円と毎年増額してきており、20年度で売上高比約6・6%にまで高めている。
また、企業の合併・買収(M&A)も視野に入れる。顧客は、部品実装の前後を含む全工程の一括提案を求めている。その対応で18年には218億円で半導体製造装置メーカーのファスフォードテクノロジ(山梨県南アルプス市)を買収した。「業績好調で、社外評は当初の『高い』が今では『良い買い物』になった」(加納取締役)。今後も同規模なら現預金で買収可能だ。
23年度目標の連結営業利益300億円は、21年度に前倒しで達成の見通しだ。より高い収益力へ投資家の期待は強く、手堅い財務戦略に対しアナリストからは「キャッシュをもっと効率的に使え」との指摘もあるという。他人資本を活用しROEをさらに高める積極策に踏み込むか否か。今後に注目だ。