仙台の温浴施設でワーケーション!“町おこし”のモデルケースになるか
社会的開発事業の試金石
日本国土開発は、仙台市泉区の「泉ケ岳」に温浴施設を伴うキャンプ場・ワーケーション施設「泉ピークベース」を7月にグランドオープンした。自社で長期保有していた遊休地を有効活用し、地域とともに新たな観光資源の創出に取り組む。同月に策定した「中期経営計画2024」では、目標の一つとして地域の課題解決のパートナーになることを掲げる。“町おこし”のモデルケースとして全国に水平展開を目指す。(編集委員・大矢修一)
「予約も好調で幸先良くスタートを切った」―。7月28日のオープンセレモニーで日本国土開発の朝倉健夫社長は笑みをこぼした。同社は約50年前、泉ケ岳中腹にあった旧リンゴ園の敷地約40ヘクタールを取得し、これまで遊休地として保有。仙台市との協議も経て、今回は、有効活用の一環として9・58ヘクタール部分をキャンプ場とワーケーション施設としての整備が実現した。
泉ピークベースは、敷地内に宮城県産材を利用したコテージ4棟、オートキャンプ向け区画「フォレストエリア(区画28サイト)」、フリーサイト(同92サイト相当)を持つ。収容人数は約500人規模。付属設備として温浴施設(温泉)・管理棟を設けた。大自然の中の施設だが、水や電気、通信などの基盤を充実させ、自前のインフラ整備力を駆使してハイグレードな環境を整えたという。サテライトオフィスや研修など企業の利用を強く意識する。
JR仙台駅から車で約45分の位置にある泉ピークベース。施設の近隣にスキー場もある。登山や自然観察など泉ケ岳地域は仙台市民のレジャースポットの一つとして親しまれている。
施設の名称は仙台市民からの一般公募で選ばれた。温泉の源泉名は「泉ケ岳水神温泉」となった。コロナ禍の中、新たな観光施設の開業に郡和子仙台市長は「新たなライフスタイルを国内外に発信してほしい」とし、今後の展開に期待を寄せる。
日本国土開発は、7月に中期経営計画2024(22年度―24年度)を策定。その中で、「新規事業・R&D領域」として、社会の課題・ニーズに対応する事業創出を方針の一つに示す。「キャンプ&ワーケーション事業」の展開は、独自事業領域の構築につなげる試みで、泉ピークベースはその試金石となる。
コロナ禍の中、働き方のスタイルが変化しつつある。日本国土開発は法人向けのアウトドア研修でスノーピークのグループ会社とすでに手を組んでおり、泉ピークベースの法人利用を見つめる。日本国土開発は4月、自社の新入社員を対象に泉ピークベースでのアウトドア研修などを先行して実施。コロナ禍でのコミュニケーション力の向上を試行し、働き方の検証を進めている。
また、泉ピークベースと同様な取り組みができないか。地域活性化の試みとして各地の自治体からの視察も始まっているという。
朝倉社長は「まだ手探りのところもあるが、新しい働き方やオフィスの形を示していきたい」としている。