生まれ変わる福岡。博多駅周辺の「100年に一度の再開発」が姿を見せ始めた
福岡市による博多駅周辺の再開発促進事業「博多コネクティッド」の規制緩和を適用した第1号物件が完成した。福岡都心部は福岡空港に近い利便性と裏腹に航空法の高さ制限を受ける。その課題の解決を高さや容積率の緩和というインセンティブとし、老朽建築物の建て替えを促しつつ、都市のにぎわい創出と両立を図る。「100年に一度の再開発」(高島宗一郎福岡市長)が形となって姿を見せ始めた。(西部・三苫能徳)
山陽・九州新幹線や在来線の起点で、九州の“陸の玄関口”とされる博多駅。その東側に完成したのがオフィスビル「博多イーストテラス」だ。NTT都市開発と大成建設が開発し、地区最大級のオフィス基準階面積約2254平方メートルを誇る。
正面の公開空地ではキッチンカーの展開やイベント開催が可能。1階にはスタートアップなどの利用を想定した小規模オフィスも設けた。市は施設整備を通じた回遊性向上やビジネス創出効果などを評価。制度に基づき容積率20%増の「ボーナス」を付与した。
辻上広志NTT都市開発社長は「交流から新しいものが生まれる。活力を世界に発信する」と力を込める。
入居率は9割ほど。地場企業、東京に本社を置く企業が入居を決めた。辻上社長は「経済が通常化する中で注目され、高い入居率につながっている」とみる。入居企業は移転に伴ってビルのグレードを上げる代わりに面積を抑える傾向があるほか、事業継続の強化や本社機能の分散ニーズに応えているという。
博多コネクティッドの大型案件では、博多駅の線路上空を開発するJR九州の「博多駅空中都市プロジェクト」が2028年末の完成を目指す。西日本シティ銀行は、駅前の本店ビルなど3棟を25―28年に連鎖的に再開発する。
福岡都心の繁華街・天神では同様の施策「天神ビッグバン」が16年から走る。21年10月に規制緩和1号の福岡地所「天神ビジネスセンター」が完成。22年末には高さ制限緩和の象徴となる高さ111メートルのビル棟を擁する「福岡大名ガーデンシティ」が竣工予定だ。
日本政策投資銀行の調査では、ウィズ/アフターコロナでも対面を重視する九州企業の傾向が見られた。テレワーク導入によるオフィス床面積の増減見通しも「変わらない」が製造業90%(全国82%)、非製造業84%(同82%)となるなど、一定のオフィス需要は維持されそうだ。
高島市長は博多イーストテラスの竣工式で、博多・天神での事業について「高付加価値、高機能なビルに生まれ変わる。競争力を持ち、雇用を生んで、ビジネスが集積する都市になる」と展望した。天神は26年、博多は28年が再開発の一つの区切りとなる。「アジアのリーダー都市」を目指す福岡の新たな姿が徐々に形になっていく。