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「全固体リチウムイオン電池」界面抵抗2800分の1に、東工大が成功した意義

「全固体リチウムイオン電池」界面抵抗2800分の1に、東工大が成功した意義

透過型電子顕微鏡法による界面観察像(a)固体電解質Li3PS4層とLiCoO2電極の間に化学反応層が形成されている(b)Li3PO4緩衝層を導入すると、界面の秩序立った構造が維持されている(東工大提供)

東京工業大学の西尾和記特任准教授と東京大学の一杉太郎教授らは、全固体リチウムイオン電池(LiB)における界面抵抗の発生起源を解明し、界面に緩衝層を導入することで界面抵抗を2800分の1に減らすことに成功した。高速充電などの妨げとなる硫化物固体電解質と電極材料間の高い界面抵抗は、界面形成時の反応で生じる層に起因することを示した。全固体電池の高出力化に向けた界面設計指針となる。

界面評価のため、界面でのリチウムイオン伝導経路を定めた電極薄膜を作製。この電極と、硫化物固体電解質としてリチウムとリン、硫黄からなるLi3PS4を用い、薄膜型全固体電池を作った。

この電池は正常動作しなかったが、界面に厚み約10ナノメートル(ナノは10億分の1)の固体電解質の薄膜を緩衝層として導入すると、界面抵抗が2800分の1になり、電池は安定的に動作した。

そこで界面構造などを分析すると、電極表面から10ナノメートル程度までの深さにおいて、固体電解質中の硫黄が電極へ拡散して電極表面付近で構造変化し、化学反応層を形成していた。さらに、界面付近で電極のコバルトが還元されていた。

一方、緩衝層を導入した界面では、硫黄拡散やコバルトの還元は起こらず、界面の秩序的な構造が原子レベルで維持された。緩衝層が高い界面抵抗を生じる化学反応層の形成を抑制することで、安定的な充放電を実現できる。

日刊工業新聞2022年8月1日

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