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水生昆虫は数日で放射性セシウム粒子を体外排出する、環境研が解明した意義

国立環境研究所の石井弓美子主任研究員と電力中央研究所の三浦輝研究員らは、東京電力福島第一原子力発電所事故の影響把握やその将来予測に向け、魚の餌となる水生昆虫への放射性セシウム粒子の取り込みを解明した。放射性セシウム粒子は数日で体外に排出され、体組織への吸収は確認されなかった。知見は魚などの放射性セシウム濃度の予測精度向上につながる。

福島県内の河川で採集したヒゲナガカワトビケラなどの放射性セシウム濃度を測定。高濃度の個体から、「セシウムボール」と呼ばれる、放射性セシウムを含む大きさ0・1マイクロ―10マイクロメートル(マイクロは100万分の1)程度のガラス状の不溶性粒子を発見した。

藻類などから見つかったセシウム粒子の組成などを分析した結果、トビケラ体内で見つかったものと同様で、餌として取り込まれたことが分かった。放射性セシウム粒子が生物に取り込まれることを示したのは初めて。

セシウムボールは不溶性のため、筋肉などの体組織に取り込まれるリスクはほとんどないと考えられる。

生物試料にセシウムボールが含まれると、放射性セシウム濃度を過剰に見積もる可能性がある。予測向上には、水溶性セシウムだけでなく、不溶性のセシウムボールの動態を理解する必要がある。

福島県環境創造センター、日本原子力研究開発機構、農業・食品産業技術総合研究機構、福島大学、東京大学との共同研究。

日刊工業新聞2022年7月20日

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