全国に販売店、中国BYDのEVは日本市場で受け入れられるか
中国の比亜迪(BYD)が日本の乗用車市場に参入する。2023年1月から順次、スポーツ多目的車(SUV)モデルなど電気自動車(EV)3車種を発売する。25年までに全国100カ所に販売代理店網を構築し、アフターサービスにも力を入れる。同社は電池など基幹部品を内製する総合力を武器に、米テスラを抜いてEVを含めた新エネルギー車で最大手となった。黎明(れいめい)期の日本のEV市場で、どう受け入れられるのか注目される。
「高い安全性や航続性能、豊富なラインアップ、手に届きやすい価格で日本の乗用車市場に参入する」。BYDの日本法人、ビーワイディージャパン(横浜市神奈川区)の劉学亮社長は21日、都内で開いた発表会でこう意気込みを示した。
第1弾としてSUV「アット3」を23年1月に投入する。電池容量は約59キロワット時で、自社調べだが485キロメートルの航続距離を確保。日本では価格を11月以降に公表する。23年半ばには小型車「ドルフィン」を販売。中国では21年8月に発売し、毎月1万台規模を販売している。23年下期にはセダン「シール」の発売も予定する。
これらEVの販売やサービスを提供する子会社「BYD Auto Japan(ビーワイディーオートジャパン)」も4日に設立した。25年までに47都道府県に100店舗超の展開を目指す。同社の東福寺厚樹社長は「現物体験やサービスを充実させたディーラー店舗網で安心を提供する」とし、オンライン販売が中心のテスラとは戦略を異にする。
BYDは電池、モーター、コントローラーなどEVの基幹部品を自社で開発・製造している。中でも電池はリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP電池)に力を入れる。同社によるとEVを含めた新エネルギー車の22年1―6月期の販売台数は前年同期比3倍超の約64万台となり、世界首位となった。
日本では15年にEVバスの販売を開始。これまでに65台を納め、国内EVバス市場で70%のシェアを持つ。モノづくりでは10年に群馬県館林市で、自動車用プレス金型の設計・製造を手がける工場(旧オギハラ館林工場)を買収。金型を日本から調達し、製造技術や品質を高めている。
日本自動車輸入組合によると、22年1―6月期の輸入EVの販売台数は同58・8%増の5192台。欧米メーカー各社も相次ぎEVを投入し競争が激化している。