地震の建物損傷診断で開発連携、東京理科大・日本ゼオンが目指すモノ
東京理科大学、日本ゼオン、同大発ベンチャー(VB)のpreArch(プレアーク、東京都新宿区、大隅晃枝社長)は、地震による建物損傷診断システムの共同開発で連携協定を結んだ。振動を熱・電気に変えるカーボンナノチューブ(CNT)素子を用いた制振ダンパーによって被災状況を把握する技術だ。ゼネコンやハウスメーカー、保険会社から関心が寄せられており、2022年度内の実用化を目指す。
建物内の制振ダンパーに、振動で生じた熱を電気に変えるCNTによる熱電変換モジュールを設置。地震時の振動でダンパーが変形して発熱、これを電気信号に変えてセンサーで計測しサーバーに送る。これに基づく建物の危険度判定を、利用者に知らせる仕組みだ。熱電変換により停電時でもデータを無線送信できる。
これまでの研究開発には物理、応用物理、機械、建築、情報など同大多分野の研究者が参加。CNTを製造する日本ゼオンの複数部署との”面と面”での産学共同研究を手がけてきた。鉄骨の建築物で実証試験も行った。この成果を元に4月1日、理学部物理学科の山本貴博教授が中心になりVBを設立。事業化に向けて3者で連携する。
地震後の建物被災状況は通常、専門家が壁を割って制振ダンパーを目視で調べるため、把握まで数カ月などかかる。大規模災害時は訓練を受けたボランティアに頼ることもある。新技術なら、居住者の家屋や避難所の継続使用の可否や、補強修理か建て替えかなど、即座に定量的に判定できるとしている。
日刊工業新聞2022年7月1日