世界初、NICTが光格子時計で国家標準時を生成した意義
情報通信研究機構電磁波標準研究センターは、世界で初めて光格子時計を参照した国家標準時を生成した。標準時の協定世界時(UTC)からの誤差が10億分の5秒以内と、従来の原子時計を用いた手法から誤差が4分の1以下になる。2030年の秒の国際単位系の再定義に貢献する。
ストロンチウム光格子時計の固有周波数を用いて時刻を求める。ストロンチウム光格子時計は不確かさが10のマイナス16乗と、16ケタの精度で日本標準時の刻み幅のずれを計測できる。UTCからの日本標準時のずれを抑えて、10億分の5秒以内にできた。従来は18台のセシウム原子時計などを組み合わせてきたが、発振周波数が15ケタ目で変動していた。数カ月でUTCとの時刻差が10億分の10秒以上に広がり、国際度量衡局から半月遅れで発表される時刻差データを参照して手直ししていた。
国際度量衡委員会の諮問委員会では30年をめどに原子時計から光時計へと秒の再定義が検討されている。正確な時刻と光速を使うと正確な距離を求められる。光時計で全地球測位システム(GPS)に依存しない時刻システムや距離計測システムの構築が目指されている。
日刊工業新聞2022年6月15日