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ROE15%維持、丸紅の財務戦略

4月から3カ年の新中期経営計画がスタートした丸紅。過去に巨額減損損失を計上した米穀物大手ガビロンを手放し、収益化が見込める投資案件に狙いを絞る。資源高や市況の回復など商社の事業環境に追い風が吹く中、2022年3月期の当期利益は過去最高益の4000億円に達する見通しだが、稼いだキャッシュを持続的な成長につなげる。丸紅の柿木真澄社長は中計の発表時に「戦略実践の3年間だが『強固な財務基盤を維持・強化しながら』という枕ことばを忘れない」と強調した。

ガビロンの穀物取引事業は「収益性がグループの平均値より劣後していた」(寺川彰丸紅副社長)。米中貿易摩擦による穀物輸出量の減少もあり、19年度は過去最大の赤字に陥った苦い経験がある。

そこで投資案件を厳選し、財務基盤の健全化に努めてきた。例えば20年度から21年度にかけては米子会社ヘレナの農業資材関連に積極的に投資し、強みの既存事業を伸ばしてきた。今後3カ年のCAPEX(追加投資)含む新規投資額は1兆円だが、既存事業への資本配分は8000億―9000億円と厚い。

車載蓄電池のリユース事業を手がける米ベンチャーにも出資するなど、サステナビリティー(持続可能性)の面でも既存事業とのシナジー強化を図る。

利益創出力を示す自己資本利益率(ROE)は15%を定量目標に設定。20年度は15・5%、赤字を計上した19年度はマイナス13・4%だったが「ROEの維持や向上を通じ中長期の資本価値を向上する」(柿木社長)。

ただ、他商社と比べ業績変動が激しい丸紅に投資家が向ける視線は厳しい。高配当の商社株のニーズが膨らむ中で「業績を安定させ、キャッシュフローから安定した株主還元をしてほしいという声が高まっている」とある大手証券会社のアナリストは指摘。中計で示した経営戦略をどのように具現化していくのが焦点となる。

日刊工業新聞2022年4月28日

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