日本経済の根幹揺るがす「人口減少」、突破に必要な二つの視点

負の循環突破、政官民連携カギ

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少子化の進行は地域にもさまざまな影響を及ぼす懸念がある(イメージ)

「国民共通の重大な危機だ」「日本の社会経済の根幹を揺るがす重大な問題」―。政府・与党の幹部から少子化をめぐって発言が相次いでいる。少子化のスピードは今後も加速するとみられ、総合少子化対策を早急に策定するとともに、政官民挙げた取り組みを早期に実行していく重要な時期にさしかかっている。(幕井梅芳)

危機感が一段と募ったきっかけは、3日に厚生労働省が公表した「2021年の人口動態統計」だ。出生数が81万1604人で、記録のある明治時代にさかのぼっても過去最少となった。17年の中位推計では、出生数が81万人台となるのは、27年だった。5年前の推計値より6年も少子化が前倒しで加速していることを示す。

今後の出生数の目安となる婚姻数は50万1116組となり、戦後最少を記録した。人口1000人に対する婚姻率は4・1で、過去最低の水準。1人の女性が一生の間に産む子どもの数である期間合計特殊出生率は1・30と、戦後最低だ。フランスや米国、英国、ドイツなど他の先進国と比べても低く、今後も人口減少の速度が早まる懸念がある。

少子化の進行は、日本経済にさまざまな影響を及ぼす。生産年齢人口が減少していくと、家計の所得や消費が減少していく。政府の試算では、仮に生産年齢人口1人当たり家計消費支出が現在と同程度と仮定すると、40年には生産年齢人口の減少に伴い50兆円の消費が消失する。現在の家計消費の約20%、国内総生産(GDP)の約1割に相当する減少幅だ。マーケットの縮小が企業の売り上げ減少につながり、産業構造が劇的に変化する可能性もある。

労働力の減少は、将来的な潜在成長力の引き下げ要因にもなり得る。生産年齢人口の減少による労働力の減少が31年にかけて0・5ポイント程度、31年から40年にかけては1・0ポイント程度のマイナス要因となる。

減少速度の加速により地域の生活関連産業・サービスが成り立たなくなる懸念もある。仮に生活に密接に関連する産業・サービスの撤退が生じると、地域からの人口流出が一段と加速する負の循環を生むことになる。

こうした危機的な状況を突破するには、ライフステージに応じた支援と、少子化対策の財源確保の方向性の二つの視点が必要だ。結婚、妊娠・出産、仕事と子育ての両立、地域による子育て支援、多子世帯への支援など、ライフステージごとに関係省庁が連携して必要な支援策を講じていくことが重要となる。

経済的な支援に加えて、相談業務や育児休業制度など制度面のさらなる充実、男性の家事・育児参画の支援など、きめ細やかな施策が欠かせない。一方、少子化対策を迅速、着実に進めるには、既存の税制の見直しとともに、安定的な財源を確保する新たな枠組みの検討も喫緊の課題だ。

さまざまな知見やノウハウを持つ民間企業の協力も不可欠。政官民が一体となった総合少子化対策を進めていくことが求められる。

日刊工業新聞2022年6月10日

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