「日産リーフ e+」ベースのレース用EVが採用、CNF連続シートの性能
大王製紙が供給体制を確立
大王製紙は微細な木質繊維であるセルロースナノファイバー(CNF)の連続シートの供給体制を確立した。愛媛大学、川之江造機(愛媛県四国中央市)と共同で実現した。連続シートは従来のバッチ式シートに比べ厚さを薄くでき、大きな面積での使用に向く。第1弾としてモータースポーツチームの電気自動車(EV)の部材向けに供給する。2024年度以降のCNF事業の本格立ち上げに向け、実証を重ねながらバリエーションを拡充していく。
大王製紙は基幹拠点の三島工場(愛媛県四国中央市)で製造するパルプを活用し、成形体や水分散液、乾燥体、複合樹脂ペレットなど各種のCNFをサンプル含め供給する。成形体はCNFとパルプ繊維を複合化したもので、軽量で高強度が特徴。汎用プラスチックを上回る力学物性を示し、熱特性にも優れている。
今回供給を始めたのは成形体のうちの連続シートで、バッチ式に続くタイプ。ロール状で、薄いうえに大きなサイズでの活用が可能。同社がかねて協賛するモータースポーツチーム「SAMURAI SPEED」(東京都港区)のレース用EVの部材として使う。車両は「日産リーフ e+」がベースで、連続シートはフロント・リアボディーに採用。米コロラド州で6月下旬に行われるレースに参戦する。CNFは軽量化や燃費向上による二酸化炭素(CO2)削減に寄与するとされ、自動車部材としての耐久性などを検証する。
大王製紙は22年3月に三島工場内でCNF複合樹脂のパイロットプラントを稼働させた。一貫製造プロセスの確立に向けた実証やサンプル供給の増大を目指しており、複合樹脂を連続シートとともに、CNFの新規事業化に向けた大きな商品に育てる考えだ。
日刊工業新聞2022年6月6日