ニュースイッチ

プラズマ下のMIケーブル損傷防ぐ、「核融合実験炉」向けに技術開発した量研機構研究者の期待

プラズマ下の損傷防ぐ
プラズマ下のMIケーブル損傷防ぐ、「核融合実験炉」向けに技術開発した量研機構研究者の期待

独自の回転式メッキ装置によって、均一・薄膜の銅メッキを施している(量研機構提供)

量子科学技術研究開発機構は、帝国イオン(大阪府東大阪市)、岡崎製作所(神戸市中央区)と共同で、フランスで建設中の核融合実験炉「ITER(イーター)」の中性子計測装置で用いる硬質な無機絶縁(MI)ケーブルに対し、均一かつ薄膜の銅メッキを施す技術を開発した。同技術により、高エネルギープラズマ下でも同ケーブルの損傷を防げる。同技術でメッキした計測装置構成機器を7月末までにイーターへ納入する予定だ。

メッキ処理加工の帝国イオンがMIケーブルメーカーの岡崎製作所の技術支援を受け、独自の回転式メッキ装置を開発した。同装置により、5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の薄膜メッキを誤差1マイクロメートルの高精度で施せる。回転の中心位置や陽極の位置などを変化させてメッキの析出速度を一定にする仕組みを採用し、陰極とケーブルの接点条件を最適化するなど工夫した。

日本はイーターの核融合反応時に発生する中性子の総量を計測し、核融合出力を評価する中性子計測システム「マイクロフィッションチェンバー」の開発を担当する。量研機構の石川正男上席研究員は「今回の事例を機にもっと中小企業が加わり、技術を世界に届ける流れを作りたい」と期待を込めた。

日刊工業新聞2022年5月30日

編集部のおすすめ