ニュースイッチ

ヤマト運輸が3Dプリンターを活用して始めた新サービスの全容

ヤマト運輸が3Dプリンターを活用して始めた新サービスの全容

ヤマト運輸などが手がける歯型模型の3D画像

ヤマト運輸が日本最大級の物流施設「羽田クロノゲート」(東京都大田区)で3Dプリンターを使う新たなサービスを始めた。羽田空港に隣接する好立地を生かし、歯科矯正用の樹脂製マウスピースを施設内で製造・発送し、全国の患者に迅速に届ける。同社が最終製品の製造・配送を担うのは初めて。今後、全国の主要施設に3Dプリンターを導入してサービスの拡充も検討する。(編集委員・小川淳)

ヤマト運輸はマウスピースによる歯科矯正サービスを提供するDRIPS(ドリップス、東京都千代田区、各務康貴社長)と提携。同社の提携クリニックから提供されたデータを基に、ヤマト運輸が3Dプリンターでナイロン粉末から歯型模型を造形。さらにこの模型から熱可塑性樹脂によってマウスピースを作成する。すべての工程を機械化し、配送準備まで施設内のワンフロアで完結することができる。最大で1日800個を製造可能だ。

透明で目立ちにくいマウスピースによる歯科矯正は、ワイヤを使う矯正より安価なため、20―30代に人気だという。ただ、段階に応じて1―2週間で取り替える必要があり、患者1人につき20―30個のマウスピースを用意しなければならない。

ドリップスの各務社長は、「従来のマウスピースは人件費の安い海外で一括製造することが多かった。ただ、届くのに時間がかかるうえ、治療計画に変更があれば作り直しと破棄が生じていた」と指摘する。また、患者にすべてのマウスピースが届くため、付け間違いの発生や管理の煩わしさも課題だった。

両社ではヤマト運輸の配送網を生かし、患者の治療段階に応じたマウスピースを1カ月ごとに製造・発送することで、効率的で無駄のないサービスを提供できるとしている。データを受け取ってから4日程度で患者にマウスピースが届く。

ヤマト運輸は以前から同施設で3Dプリンターを導入し、人工関節の手術用治具の造形などを手がけていた。同社営業・オペレーション設計部の清水淳二マネージャーは、ドリップスの業績拡大に応じて、「関西などの主要施設にも3Dプリンターの設置を検討していく」としている。

また、配送自体は郵便受けに投函できる配送サービス「ネコポス」で行うため、再配達の手間がいらないなど、ヤマト運輸にとってもメリットは多い。今後、消耗品などの製品で同様の製造・配送サービスを展開することも想定している。

日刊工業新聞2022年5月23日

編集部のおすすめ