コマツ・日立建機が「ロシア」「中国」で痛手、求められる新発想
経済制裁・過剰在庫・景気後退
コマツと日立建機の建設機械大手2社は、ロシア向けと中国向けの売上高比率が2023年3月期に大幅に減る見通しだ。コマツの場合、建機・車両事業の売上高のロシアCIS(独立国家共同体)向け比率は22年3月期の7%から2%、中国向けは同4%から3%に、それぞれ低下する。ロシアの比率低下はウクライナ侵攻に絡む日米欧諸国の経済制裁、中国の比率低下は過剰在庫や景気後退などが背景だ。2社とも落ち込んだ分は米州やアジア市場の伸びでカバーするとしており、これを計画通り達成できるかが焦点になる。(編集委員・嶋田歩)
ロシアと中国のうち、ロシアは多分に政治的影響の方が強い。資源価格の上昇は建機需要に追い風に作用する。実際、22年3月期のロシアCISの売上高はコマツが前期比64・2%増の1844億円、日立建機は同70・0%増の386億円と躍進していた。ウクライナ侵攻に絡む西側諸国の経済制裁で、状況は一変。欧米のロシア制裁に日本も同調せざるを得なくなり、コマツ、日立建機両社とも部品供給のストップにより現地工場の稼働停止や大幅ダウン状態に追い込まれた。
「現地工場は日本からコンポーネント輸送ができなくなったため、残る部品で細々とやっている状態」。日立建機の平野耕太郎社長は話す。コマツを含め両社とも「現時点では撤退は考えていない」と口をそろえる。「今ロシアは、機械がすごく不足している状態。部品供給とサービスの停止で建機の事故が起きないかと危惧している」。コマツの小川啓之社長は指摘する。
他方、中国の売上高減少は経済的色彩が強い。武漢市内で発生した新型コロナウイルスを押さえ込んだ同国は、春節(旧正月)特需もあって21年3月期は大幅に売上高を増やしたが、22年3月期は反動で減少、23年3月期も落ち込みが続く。
コマツによると、21年3月期の中国の建機需要は33万台。リーマン・ショック以後に景気政策で売り上げが伸びた11年3月期の20万台をも大幅に上回る数字だ。中国恒大集団の経営危機に伴う不動産不況、新型コロナ感染再拡大による経済封鎖の状況を考えれば、過剰在庫は当面続く公算が大きい。価格低下も強まることが予想され、市場の魅力は薄れている。
23年3月期のロシアと中国の減収分の合計はコマツが1252億円、日立建機は447億円に達する。落ち込み分をカバーするため、両社とも北米やアジア市場で販売努力による増収を計画する。北米は現時点では住宅着工増加に伴う住宅需要と道路交通向けを中心に市場拡大が続く。南米市場も鉱山市況高が追い風だ。アジアもニッケル鉱山や農林業向けを中心に増勢が続く。
鋼材費など原材料価格の上昇と物流費の上昇は、製品の値上げで相殺する考え。ロシアや中国市場の落ち込みは、地政学リスクや経済安全保障リスクの可能性をあらためて突き付けている。グローバリズムも、これらのリスクを念頭に入れた新発想が求められる。
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