波に乗れるか!?波力発電、実用化の期待高まる―コスト・安全対策がカギ
発電効率を大幅に高める次世代技術開発も進む
送電費用、検証が必須
■東大、今夏から実証開始−既存の電力網活用
波力発電を実用化する際のコストは、装置費などに加えて、送電費用を考慮する必要がある。送電網がない場所に設置して系統電力に接続する場合、送電網の整備に多大な費用がかかる。NEDO事業は装置開発が主題のため、送電費用を含まない価格で発電単価の目標を掲げるが、実用化する上でその検証は欠かせない。
■初めて接続
東大生産技術研究所の林昌奎(リム・チャンキュ)教授、丸山康樹特任教授らは、送電費用を抑制した実用化モデルの構築を目指す。漁港の沿岸に設置し、既存の送電網を生かす。岩手県久慈市の漁港に出力43キロワットの試験装置を設置し、今夏から17年度まで実証実験を行う予定。
鉄板で波を受け、振り子運動により発電する。電力の一部は漁港で消費し、残りを売電して装置の建設費に還元する構想。久慈市の実験では「国内の波力発電装置として初めて系統電力に接続する」(丸山特任教授)。
実証後は装置を3台連ねて、出力150キロワット以上の発電設備を構築する。神奈川県平塚市で19年度以降に実用化規模の装置として実証する考え。
温暖化対策や国産のエネルギー資源としての有用性に加えて、被災地の復興を下支えする新産業として、海洋エネルギー利用への期待は高まっている。波力発電の研究開発では一定の成果が出始めたとはいえ、装置の長期的な安全性確保など克服すべき課題は依然多い。実用化への道のりをどこまで具体的に描けるのか。勝負の時を迎えている。
(文=葭本隆太)
日刊工業新聞2016年1月4日 科学技術・大学面