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【2016を読む】フィンテックの衝撃。銀行がバックオフィスになる日

【2016を読む】フィンテックの衝撃。銀行がバックオフィスになる日

銀行はペッパーを店舗に導入。JCBと富士通の手のひら静脈決済システム(右上)アクサ生命のアプリ(右下)


<カード>生体認証で手ぶら決済。照合時間・精度・安全性がアップ


 決済分野でも、フィンテックが広がっている。ITベンチャー企業のリキッド(東京都千代田区)は、指紋を用いた生体認証による決済システムを2015年2月に実用化し、ジェーシービー(JCB)と富士通も手のひら静脈による決済システムを「2、3年後には実用化したい」(松浦肇JCBブランドインフラ推進部主事)と考える。生体認証により、現金やカードを持ち歩かず、手ぶらで決済できる時代を迎えつつある。

 「現金やカードを狙った犯罪をなくしたい」と、リキッドの久田康宏社長は生体認証の決済システムを開発。指紋を事前登録し、クレジットカードを登録するか現金を入金しておけば、支払いの時は端末に指をかざすと1秒程度で決済できる。

 独自開発したアルゴリズムにより、利用者が増えると照合時間の増加や照合精度が下がるといった問題をクリアした。久田社長は「これまで他人と間違えたことはない」と自信をみせる。現在はハウステンボスや飲食店、海外ホテルなど約40カ所で採用され、利用者は1万人程度いる。17年には3000万人の利用を目指す。

 一方、JCBと富士通、富士通フロンテックは手のひらを端末にかざすと決済できるサービスの実用化を目指す。事前に手のひら静脈とクレジットカードの情報を登録しておく。手のひらをかざすと静脈認証サーバーから合致するカード情報が読み出され、決済できるという仕組みだ。

 実証実験での本人拒否率は0・01%、他人を本人と認識する他人受け入れ率は0・00001%という。JCBが行った社員食堂やインドネシアでの実験では、「先進的」や「便利」などと評判は上々だった。

 生体認証による手ぶら決済が広がれば、現金やカードを出す手間を省けるのに加えて、紛失の心配もなくなる。また、強盗に襲撃されるリスクも低くなる。

 普及のためには、法整備や誤認認証の防止、セキュリティーをさらに高めていくなどの必要はある。それでも、「東京オリンピック・パラリンピック開催の20年を一つのめどとして広がるだろう」(松浦主事)と、今後の展開が注目される。

<証券>人工知能使い景況感指数化


 野村証券は、ディープラーニングを活用した人工知能を使い「野村AI景況感指数」を開発した。政府の景気ウオッチャー調査をサンプルに使い、文章と評価の対応関係を人工知能に学習させた。この人工知能に、政府の「月例経済報告」、日銀の「金融経済月報」の全文章を分析させ、政府・日銀の景況感を指数化。11月から機関投資家向けに情報提供している。

 従来も文章中の単語を数え上げて景況感を割り出す方法はあったが、ディープラーニングを使うことで精度が抜群に向上した。ディープラーニングは文脈を理解できるのが特徴。例えば「悪くなる要素は感じられないので、このまま良くなる方向に進む」という回答の場合、従来だと「悪く」「感じられない」などの文字を拾ってネガティブに受け止めてしまっていたが、ディープラーニングでは文章の流れを読み、ポジティブな評価を出すことができる。

 開発に携わった金融工学研究センターの山本裕樹シニアクオンツアナリストは「今後は参加交流型サイト(SNS)やニュースの文章をAIで数値化する」研究にも意欲をみせている。

大和証券もAIの業務活用を狙い、2015年春に「AI推進室」を立ち上げた。コールセンターの受電対応の効率化などを軸に、検討を進めている。
日刊工業新聞2016年1月1日金融面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
日本企業でフィンテックで大化けしそうな会社はソニーだと前々から思っているのだが。

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