リース大手がサービスロボット活用で狙うビジネスの構想
ロボ運用ノウハウを蓄積、自ら試し事業化模索
三菱HCキャピタルは2021年11月、ソフトバンクロボティクス(東京都港区)の除菌清掃ロボット「ウィズi」を本社(東京都千代田区)に試験導入した。きれいにしたいルートを登録すると、自動で清掃してくれるのが特徴だ。社内でサービスロボットを使うのは初となる。狙いは業務効率化ではない。ロボットの運用ノウハウを蓄積し、将来は自社でロボットビジネスを手がけることを目指しており、その第一歩だ。(戸村智幸)
三菱HCキャピタルはリース大手2社の三菱UFJリースと日立キャピタルが経営統合し、21年4月に発足した。同時に、経営企画本部内に事業開発グループを立ち上げた。新規事業創出を目的とする組織だ。
着目したのがサービスロボットだ。サービス産業の人手不足やコロナ禍による非接触需要を商機とみた。森田芳弘事業開発グループ課長代理は「ロボット単体ではなく、全体をつなげるビジネスにしたい」と構想する。
そのためにはロボットの運用ノウハウが欠かせない。そこで森トラスト、ソフトバンクロボティクス、オクタロボティクス(さいたま市南区)と組み、ウィズiなどのサービスロボットを森トラストのオフィスとホテルで使う実証を始めた。
これとは別に、三菱HCキャピタルは11月下旬から12月上旬、新丸の内ビルディング内の本社で、ウィズiを試験導入した。自社でも運用ノウハウを得るためだ。
ウィズiには、会議室や来客受け付けなどがある二つの階のフロアの清掃を任せた。幅47センチ、長さ48センチメートル、高さ66センチメートルの機体の底にブラシとブレードがあり、ゴミを吸引する。
ルートの登録は、機体のモニターで操作する。発着地点の壁に2次元コード(QRコード)を張り、人がウィズiを押してルートを通り、登録する。2回目からは自動で走行し、清掃してくれる。機体に搭載のセンサーを活用している。
清掃のデモを取材した。ウィズiは部屋と部屋の間の細長い廊下をまっすぐ進み、部屋の間仕切りにぶつかるなどのトラブルもなく往復した。走行するウィズiの後ろに付いて写真を撮影すると、ゆっくり歩くと置いて行かれそうになるほどの速いペースで走行していた。運用面の課題はそれほどなさそうだが、部屋の出入り口を通るには迂回(うかい)が必要など難しさもあるという。水に弱い、室外には向かないなどの短所もある。
今後の展開が不透明なのが気がかりだ。試験導入を拡大するかなど計画は未定。森田事業開発グループ課長代理は「ビジネス化への検証はこれから」と述べる。ビジネスの具体像も不明確だ。ウィズiに絞り込むか、他のサービスロボットも取り組むかは不明だ。
全体をつなげるという構想の実現には幅広い知見が求められる。その獲得は簡単ではない。ただ自ら試しユーザー視点で事業化を模索する姿勢からは、顧客需要にきめ細かく対応したビジネスが生まれる可能性を感じる。