「全固体リチウムイオン電池」向け量産へ、高伝導で低温焼結するスゴい物質の全容
キヤノンオプトロンが酸化物系固体電解質を開発
キヤノンオプトロン(茨城県結城市、奥浩志社長)は、産業技術総合研究所との共同研究で、全固体リチウムイオン電池(LIB)用の酸化物系固体電解質を開発した。高い伝導性を有しながら、従来の固体電解質より低い温度で焼結し、抵抗物質の形成を抑制する。本社工場内に酸化物固体電解質の生産ラインを設置し、2023年前半に量産・販売する計画。酸化物系固体電解質を使用した全固体LIBは、高い安全性が期待されている。
これまで固体電解質として注目されることがなかった結晶性材料に、特定の異種元素を添加。電池出力に影響を及ぼす伝導性を大幅に向上することに成功した。
同社の固体電解質は大気雰囲気下600―700度C程度で焼結する。活物質との化学反応を抑制し、リチウムイオンの出力を向上できる。従来の固体電解質は電池製造時に1000度C以上で焼結する必要があった。高温で加熱すると混合している活物質が化学反応し、リチウムイオンの移動を阻害する抵抗物質となり、十分な出力が得られない電池となる問題があった。
日刊工業新聞 2022年3月11日