3年で6万ha喪失…「チョコレート需要」が破壊する森林の今
国際的な環境保全団体のマイティー・アース(米ワシントン)は、カカオ生産地の拡大によって2019―21年の3年間にコートジボワールとガーナの2カ国で合計5万8918ヘクタールの森林が失われたとする報告書を公表した。この面積は東京23区に相当するという。チョコレート関連企業などがカカオ農園の新規開発をやめると約束した17年以降も森林破壊が進行していると指摘した。(編集委員・松木喬)
報告書によると、両国では過去30年間で森林の多くがカカオ農園になっており、保護区での森林破壊も確認した。カカオで生計を立ている農家が多く、チョコレートの需要が高まっていることから森林を伐採した農園開発が続いている。
17年には英国のチャールズ皇太子が関連企業に呼びかけて「カカオと森林イニシアティブ」を設立。賛同した世界35社やコートジボワール、ガーナの両政府などが新規開発を停止すると宣言していた。
報告書では改善策として企業や政府に対し、森林破壊の監視体制の確立や2年以内に森林破壊をゼロにする目標設定と進捗(しんちょく)の公表を求めた。
また、カカオ農家の生活改善も訴えた。チョコレート産業全体の利益の3―6%しか農家は得ていない。貧しいままだと栽培をやめる農家が増えるため、企業はチョコレート原料の調達が難しくなる。マイティー・アースのサム・マワトワシニア・アドバイザーは「利益を得ている企業は、カカオ産業の持続可能性のために農家に再投資するべきだ」と指摘した。
日本についても言及した。ガーナのカカオ産業にとって日本は第2位の輸出先であり、日本が輸入するカカオ製品の7割以上をガーナ製が占めるという。「日本はカカオをガーナとの重要な外交問題にすべきだ」(マワトワシニア・アドバイザー)とも提言した。
チョコレート産業以外の企業にも環境や生産者への人権に配慮した調達活動が求められている。どの業界の企業も生産と販売を継続するために、原料の調達先の状況を確認する必要がある。