コロナ禍でむしばまれる従業員の心、その主要因は?
日本生産性本部が企業の人事担当者を対象に実施したアンケートによると、従業員のメンタルヘルスが新型コロナウイルス感染拡大によって「悪化した」とする企業の割合は4割だった。コミュニケーションの変化や在宅勤務、感染に対する不安を主な悪化要因として捉えていることも分かった。
アンケート対象は上場企業2312社の人事担当者。2021年7―9月に実施し、有効回答数は144社だった。
「コロナ禍による従業員のメンタルヘルスへの影響はあったか」という問いに対し、「悪くなった」と回答したのが1・4%、「やや悪くなった」は39・9%だった。「変化なし」が53・1%、「やや良くなった」が5・6%、「良くなった」が0%だった。
要因を複数回答で選択してもらったところ、メンタルヘルスが「悪化した」企業(悪くなった・やや悪くなったと回答した企業)については、「コミュニケーションの変化」が86・2%と最も割合が高く、「在宅勤務の増加」(56・9%)、「感染への不安」(同)、「職場の対人関係の変化」(46・6%)と続いた。
メンタルヘルスが「悪化していない」企業(良くなった・やや良くなった・変化なしと回答した企業)については、「在宅勤務の増加」が66・7%と最も高かった。「職場の対人関係の変化」(52・9%)、「コミュニケーションの変化」(47・1%)と続いた。
「コミュニケーションの変化」はメンタルヘルス悪化の主要因と考えられている一方で、「在宅勤務の増加」や「職場の対人関係の変化」は悪化した要因とも悪化していない要因とも考えられている。
日本生産性本部では、「対人関係はストレスの要因ともなるものであり、在宅勤務により解消されている可能性もある」と分析している。ただ、「短期的に良い影響があるように見える職場であっても、長期的に見るとどうかは検証する必要がある」とも指摘している。
同アンケートでは、最近3年間における「心の病」の増減傾向も聞いた。「増加傾向」と回答した企業は22・9%となった。19年の前回調査と比べて9ポイント減少し02年の調査開始以来最低となった。「横ばい」は59・7%、「減少傾向」は11・1%だった。日本生産性本部では「増加傾向に歯止めがかかったからといって心の病が減ったわけではない。『増加傾向』の回答が『減少傾向』を上回っているのが現状だ」と警鐘を鳴らしている。