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京急や小田急が沿線観光地をMaaSで活性化、それぞれの戦略

京急や小田急が沿線観光地をMaaSで活性化、それぞれの戦略

点在する店舗を回遊する2次交通の充実を図る(京浜急行電鉄提供)

京浜急行電鉄、小田急電鉄は、神奈川県の三浦半島や箱根といった沿線の人気観光地でMaaS(乗り物のサービス化)を使った取り組みを進めている。観光ルートを発信して混雑回避と回遊性を高めたり、マイカーから乗り継ぐパークアンドライドを促したりなど、エリアの活性化にも結びつける。(浅海宏規)

京浜急行電鉄は2021年10月から、三浦半島における観光型MaaSのウェブサービス「三浦COCOON(コクーン)」を始めた。現在、乗車券やグルメ、アクティビティを一体化したデジタルチケット「よこすか満喫きっぷ」を1月末まで期間限定で販売しており、電車・バスの乗車や飲食店での食事、美術館巡りなどをスマートフォン1台でできるようにした。

神奈川県三浦市、同横須賀市といった地元自治体や、現地の観光事業者など106団体が「コクーンファミリー」として参加し、イベント情報などを三浦コクーンのサイト上で確認できる。

生活事業創造本部レジャー・オフィス事業部の佐々木忠弘課長は、「三浦半島では特定の道路に混雑が集中していることや、『よこすか満喫きっぷ』で訪れても飲食後のコンテンツが分からないといった声があり、機会損失が生じていた」と説明する。

また、「三浦コクーン」とアイシンのスマートフォンアプリケーション(応用ソフト)「SmartBuddy」を連携し、混雑を回避して三浦半島を周遊する観光ナビゲーションを始めた。併せて「点在する店舗を回遊する2次交通が不足していた」(佐々木課長)としてレンタサイクル、電動キックスケーターなどでの観光ルート案内を提供。観光客へ点在するスポットへの回遊を促す。

小田急電鉄は鉄道やバスなどを組み合わせた経路検索や電子チケット購入ができるアプリ「EMot(エモット)」を展開する。大橋健次経営戦略部課長代理は「鉄道のみならず、タクシーやシェアサイクルなど多様なモビリティーを含めたルート検索を目指した」と説明する。

特急券の予約・販売機能を「EMot」に搭載(小田急電鉄提供)

21年秋からは、特急「ロマンスカー」の特急券の予約・販売機能をエモットに搭載。また、箱根の観光シーンに合わせた10種類のデジタルチケットを新たにエモットで購入できるようにした。

このうち「デジタル箱根のりものパスLite」は、箱根登山電車(強羅―宮ノ下間乗り降り自由)や海賊船、「箱根ロープウェイ」などを片方向に利用しながら箱根エリアを一周できる。

藤垣洋平経営戦略部次世代モビリティチームMaaSエコシステムマネジャーは、「自動車で箱根エリアに来る人であっても、パークアンドライドとして活用してもらうことで道路混雑の緩和につなげたい」と語る。観光客の来訪を促しつつ、公共交通の利用にもつなげていく。

日刊工業新聞2022年1月5日

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