「脱炭素」「半導体不足」は製造業にどんな影響を与えるか
製造コスト増/研究開発促進
国際協力銀行(JBIC)がまとめた製造業の2021年度海外事業展開に関する調査によると、約8割の企業が脱炭素の動きが事業に影響するとみていることが分かった。影響は製造コスト増加などマイナス面だけでなく、新製品の研究開発促進などプラス面も同程度に上った。コロナ禍で表面化した物流の逼迫(ひっぱく)・半導体不足の影響を多くの企業がサプライチェーン(供給網)上のリスクととらえていることも明らかになった。
脱炭素について「既に影響が出ている」は21%、「今後生じることが予想される」が58%に上った。ただ影響の内容について「製造コストの増加」を挙げたのが236社に対し、「新製品の研究開発の促進」は240社でプラスとマイナスの両面が拮抗していた。また、多くの企業が自社工場だけでなく、サプライチェーン上で排出源の特定・計測に取り組む姿勢もみられた。
サプライチェーンの中期的な見通しに関する設問では、脅威になる外的ショックについて「物流の途絶・逼迫」が全体の43%、「コロナ禍を含む疫病」が37%、「米中摩擦などの政治的リスク」が11%と続いた。
半導体不足については「マイナスの影響を受けた(受けている)」が65%に達した。「自動車減産により製品受注が減少した」という声が自動車や金属製品などの業種で上がった。一方、「プラスの影響を受けた(受けている)」も9%あった。「半導体関連の設備投資が増加したことで、半導体製造装置関連事業が好調だった」ようだ。半導体関連産業の裾野が多くの業種にわたっていることが再認識された。
今後3年程度の有望国・地域では1位が中国で47・0%。2位はインドで38・0%、3位は米国で32・8%だった。上位2カ国は前年と同じで、米国は約20年ぶりに3位に浮上した。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、東南アジア諸国連合(ASEAN)地域は前年比で順位を落とす国が多かった。
調査は33回目で、515社が10月7日までに回答した。項目ごとに回答数は異なる。