「背筋ぞわっ」の感覚を会場みんなで共有する技術、エンタメを変えるか
慶応義塾大学の賀堰研究員と南沢孝太教授らは、コンサートなどで感動し、背筋がぞわっと感じる感覚を会場全体で共有する技術を開発した。心拍などの生体情報を読み取り、感動しそうなタイミングで首筋に冷温を与える。すると感動の自覚を促すことができた。30人規模の実験で95%の利用者に感動を誘発できた。
人間は感動などでぞわっと感じると毛穴が開く。手に装着したセンサーで脈拍や発汗などを計測する。この感動の推定精度が約85%と高い。会場の参加者にセンサーを身に付けさせ、観客全体の感動のボルテージを計る。会場全体でボルテージが高まったところで、首に装着した装置により、首筋に冷温を加えてぞわっとさせると感動と認識される。
人間の笑いでは、自分は面白いと思っている状況で、周囲の笑い声などの刺激があると笑いになる。これと同様に感動のボルテージが高まっている状況で冷温の刺激を加えると95%の利用者が感動を認識した。
感動の誘発だけでなく、会場のボルテージを定量的に記録できる。これを会場の照明の色などに反映させてパフォーマーと会場が共有することも可能。ジャズやダンスなど即興性の高い演目はパフォーマーが会場のボルテージに応じて表現を変えられる。他の人が感動した状況を共有できるため新しいエンターテインメント体験になる。
オンラインイベントでは会場の空気感を感じるのが難しかった。新技術はリモートで計測し配信できる。内閣府の大型研究事業「ムーンショット型研究開発事業」として開発した。
日刊工業新聞社2021年12月20日