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値下げが加速した携帯通信サービス、「転入増えない」消耗戦の行方

値下げが加速した携帯通信サービス、「転入増えない」消耗戦の行方

「ポヴォ」を発表する高橋誠KDDI社長(1月)

2021年は携帯通信サービスの値下げが加速した。NTTドコモは20年12月、オンラインで各種手続きを受け付ける割安な料金プラン「アハモ」を21年3月に投入すると発表。競合他社がこれに対抗を試みたことで消耗戦の様相となった。

21年、最初に動きを示したのはKDDIだった。1月、オンライン手続きに特化したブランド「ポヴォ」を3月に始めると決定。月間データ容量20ギガバイト(ギガは10億)を2480円(消費税抜き)で使え、通話料は別途かかる仕組みとした。1回5分以内の国内通話を何度でも無料にしていたアハモよりも、基本料金が安価である点が話題を集めた。

するとソフトバンクが2月、ポヴォと同様の料金体系である「ラインモ」の3月投入を発表。これを受けたドコモは3月になってアハモ値下げを決めた。

3社にとって悩ましいのは、必ずしも転入が増えない点だ。MMDLabo(東京都港区)が2月に行った調査によると、アハモに契約変更を検討している人の72・9%、ポヴォでは82・4%が、それぞれ自社内からの移行となっていた。実際にドコモは、アハモの先行申し込み段階でも発売後でも、自社の別の料金プランからの変更が他社からの転入よりも多かったという。

業績への影響も小さくない。21年4―9月期は、3社がいずれも通信料値下げが響いて営業減益となった。解約率も高止まりしている。大手通信会社から回線を借りて格安な通信サービスを展開してきた仮想移動体通信事業者(MVNO)で値下げが相次いだことも影響しているようだ。

大手3社は、金融・決済や電子商取引(EC)といった非通信事業に力を注いで収益源を多様化する必要性が増す。ソフトバンクの宮川潤一社長は、総合情報サイト「ヤフー」や対話アプリ「LINE」の顧客基盤の活用を進めて「総合デジタルプラットフォーマーになる」との決意を改めて示した。各社は自社の強みを見極めて深掘りする姿勢がこれまで以上に問われる。

日刊工業新聞2021年12月7日

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