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老眼は一種の老化現象。老眼鏡以外の対処方法も

おすすめ本の抜粋「眼科119番 第3版 一家に一冊…目の薬箱」

老視

Q.老眼は遠視とは違うのですか。
A.手元にピントを合わせる調節機能が年齢とともに衰えた状態が老眼(老視)であり、一種の老化現象です。遠視はピントが遠くにも近くにも合わない屈折異常ですから、全く違った状態です。

調節とは

目は焦点を合わせることにより像をとらえるビデオカメラにたとえられます。角膜、水晶体の二枚のレンズにより光を集め、網膜というフィルムに像を結ばせ、その像を視神経というコードで脳に送り、物を“認識”しています。水晶体というレンズはカメラでいうオートフォーカスの機能をしており、毛様体という筋肉でその厚みを変えることにより、遠くから近くまでピントが合うように、いわゆる“調節”をしています。

老眼は調節機能が衰えた老化現象

加齢に伴い水晶体の弾性が低下して、この調節力が減退し、近方視が困難になった状態が“老眼(老視)”で、一種の老化現象です。一方、遠視は角膜などのカーブが弱かったり、眼軸(がんじく)といって角膜から網膜までの距離が短いため、網膜上に焦点を結ばない状態で、子どもにも多く、老眼とは異なった屈折異常です。調節力は10歳を超えたころから、すでに減退し始め、43歳前後で手元が見にくいと自覚し始めます。そして、60歳を過ぎたころには調節力はほぼなくなります。

近視の人は老眼にならないのか

近視の場合はもともとかなり近い距離まで見える(近点が短い)ため、老眼が出ても近くを見ることができ、老眼を自覚せずにすむことがあります。このため、近視は老眼にならないと言われるのですが、メガネなどで遠くにピントを合わせれば当然、近くは見えにくくなります。そのため、遠近両用メガネが必要になるのです。

老眼はどのようにして始まるか

老眼の初期症状としては「夕刻になると目がショボショボ、ゴロゴロする」、「午後以降に軽度の頭痛や肩こり、目の奥の痛みや項部痛がある」、「薄暗い場所で手元が見にくい、離して見る必要が出てきた」などがあります。これらを自覚したら、一度眼科を受診して近見視力(手元の視力)を測定し、必要なら弱い老眼鏡を作成するとよいでしょう。無理をしてメガネなしで過ごすことは、眼精疲労(がんせいひろう)の原因になるだけで、目にとってよいことはありません。

老眼鏡にはどのようなものがあるか

老眼鏡には近用のみのレンズのほか、遠近両用メガネもあります。遠近両用には初期老眼に適している二重焦点レンズや、中期以降の老眼の場合に中間距離もカバーできる三重焦点レンズや、最近では累進屈折力(るいしんくっせつりょく)レンズ(バリラックス)も多く用いられます。累進屈折力レンズのメリットとしては徐々に加入度が強くなるため、全領域で焦点が合う、継ぎ目がないので美容上の利点などがありますが、手元のピントの合う領域が狭い、横を向いたとき歪みを感じる、遠視・正視の人は慣れにくいなどのデメリットもあります。眼科医や眼鏡士に相談し、その人に合ったレンズを選択するとよいでしょう。

老眼対応のコンタクトや眼内レンズはあるのか

最近では遠近両用コンタクトレンズもよいものが開発され、50歳以上のコンタクトレンズ使用者の約10%が使用していると言われております。ただし、乱視は矯正できず、瞳の大きさが影響することもあって、どの距離も今ひとつすっきり見えない、ぼやける、などの不満が多いのも事実です。

最近の話題として、最も注目されているものの一つに「多焦点眼内レンズ」があります。このレンズを白内障手術の際、眼内に入れることにより、術後、メガネなしで遠くも近くも見ることが可能です。つまり一種の老眼矯正治療といえます

(「眼科119番 第3版 一家に一冊…目の薬箱」p.134-137より抜粋)

<書籍紹介>

ディスプレイを見る機会が多い現代人の眼は、常に酷使されている。加えて高齢社会を迎え、白内障や緑内障といった加齡性疾患の問題もクローズアップされている。本書では、身近な眼疾患や日頃目について抱く疑問などをQ&Aでやさしく解説。近視矯正手術や最先端治療についても詳細情報を提供する。

書名:眼科119番 第3版 一家に一冊…目の薬箱
編著者名:中村友昭
著者名:名古屋アイクリニック、中京グループ眼科医師
判型:四六判
総頁数:268頁
税込み価格:1,650円

<執筆者>
中村友昭(なかむら ともあき)
所属 名古屋アイクリニック院長
専門領域 角膜疾患、ドライアイ、屈折矯正手術
現在の研究分野 屈折矯正手術における視機能

<販売サイト>
Amazon
Rakuten ブックス
日刊工業新聞ブックストア

<目次(一部抜粋)>
Ⅰ 目の仕組み
Ⅱ よくある眼疾患から緊急疾患まで
緊急疾患/よくある眼疾患/子どもの眼疾患/若者に発症する目の病気/加齢性疾患
Ⅲ 屈折異常
Ⅳ その他の目の疾患と検査
目と全身疾患/現代人と目/スポーツと目/眼科の検査
Ⅴ 眼科治療最前線

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