国内初の自航式、世界最大級の「洋上風力」作業船が進水!
清水建設がジャパンマリンユナイテッド(横浜市西区)に発注し建造中の世界最大級の自己昇降式作業台船(SEP船)が、24日に広島県呉市で進水作業を行った。洋上風力発電施設を建設する船で、搭載するクレーンの揚重能力は超大型洋上風車の建設に対応する世界最大級。高い積載能力の巨大な船体が効率的な作業を実現する。自らの動力で航行する自航式は国内初。2022年10月に完成し、23年春には施工を始める。
建造中のSEP船は全長142メートル、全幅50メートルと作業船としては大型の船体で、搭載する施設の部材や風車のタワー、ナセル(駆動部)、ブレード(羽)を持ち上げるクレーンの最大揚重能力は2500トン、最高揚重高は158メートルと世界最大級になる。大型洋上風力発電施設の8メガワット風車で7基、12メガワット風車で3基分の全部材が一度に搭載できる。海底に土台を置く着床式に加え、海上に浮かぶ浮体式にも対応する。
自航式の船でタグボート船が必要なく回航費が低減でき、効率的な建設が可能になる。住居室は最大130人。将来はアジアなど海外の建設にも対応する。同船の建造費は500億円。白枝哲次エンジニアリング事業本部事業部長は「計画や設計、施工の判断が早まる」と単独所有のメリットを説明する。
カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)を進める政府は、洋上風力発電を将来の主力電源とみており、30年までに発電能力1000万キロワット、40年までに同3000万キロ―4500万キロワットに拡大する計画。国内の洋上風力発電向け風車は出力5メガワット級以下が主流だが、この市場で先行する欧州では6メガ―8メガワット級から12メガワット級に大型化が進む。
田中仁志同事業本部工事部部長は「発電効率を高めるために毎年1メガワットずつ大型化するだろう」とする。これに伴い、風車の大型化が不可欠になる。清水建設によると、12メガワット級の建設に必要なクレーン揚重能力が最大1700トン。現在、国内の大型SEP船の同能力は最大で1600トン。発電施設の大型化が進む中で、清水建は先行する。由良佳之同事業本部企画部長は「引き合いは多い」という。建造作業は約75%を終え、進水作業でドックから海上に移動し、船体上部に住居室やクレーンを設置する。