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少子化が進む市場で健闘?統計が示す「学習塾」業界の実像

学校教育とは別に、子供たちを私的に集め学校教育の補足や進学準備教育を行う施設として、「学習塾」がある。最近は塾業界を取り上げた漫画作品・民放ドラマが話題を集め、進学受験について改めて考えた方もいるのではないだろうか。

また、新型コロナウイルス感染症の流行により2020年4月に最初の緊急事態宣言が出されたが、この宣言以前にも外出自粛や学校の一斉休校などが要請され、経済活動に大きな影響を与える結果となった。

今回は学習塾に関連する統計について、感染症の影響を含めた動きを見ていく。

少子化のなかでも健闘している「学習塾」

 

学習塾の経年変化は、経済産業省で作成している第3次産業活動指数から、受講生徒数に基づき作成される「学習塾指数」をみることで把握できる。2015年を100とする指数では、2019年まで緩やかな上昇で推移していた。

一方、学習塾の受講生徒は、学齢期の人(小学生と中学生)が中心となる。総務省が公表している住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査より、学齢期に該当する年齢層の人口の推移は、年々減少していることがわかる。

2020年は感染症拡大の影響により、学習塾指数が大きく低下した。しかし感染症拡大前の2019年まで、対象とする年齢の人口が減少するなか上昇の動きを見せた。学習塾は苦境の中、健闘していることが読み取れる。

コロナ禍で大きく落ち込んだものの回復の動きを見せる学習塾

2020年1月以降、月次の学習塾指数の動向は2020年2月から3月にかけ、指数値が100.7から99.6へと低下した。2020年2月27日に全国一斉での休校要請(休校期間は3月2日から最長で約3か月間となった。)がなされたことが一因と思われる。加えて、4月7日には東京など7都府県を対象とし(その後4月16日に対象範囲を全国に拡大し)1回目の緊急事態宣言が発令された。最終的に解除となる5月25日までの約2か月間にわたり、不要不急の外出自粛など、可能な限り人と人との接触を抑える旨の指示が出たことを背景に4月以降も低下をつづけ、6月の指数値は92.3となった。その後、持ち直しの動きをみせるものの2021年5月は同99.5と、いまだ100.0を下回る水準での推移となった。

なお、学習塾指数は、特定サービス産業動態統計(以下「特サビ動態」という。)における学習塾の「受講生数」の動向を示した数量指数となる。

これと比較するため、特サビ動態における学習塾の「売上高」を指数化した推移をみると、4月及び5月では大幅に低下し6月の指数値は88.0となったが、7月以降持ち直しの動きを見せた。10月には同101.1となり、その後は100.0を超える水準で推移しており、学習塾指数よりも早い時点で、より強い上昇傾向にあると読みとれる。

このように、コロナ禍で一度は大きく落ち込んだ学習塾だが、その後は回復の動きが見て取れ、学習内容も一人あたりの受講料金が高くなっていると思わる。

※ 3ヶ月移動平均の指数値を使用。

他方、家計の支出面からも統計データを見ていきたいと思う。

家計調査(総務省)「1世帯当たり1か月間の支出(二人以上の世帯)」から、学習塾の支出額が含まれる「補習教育」と、英会話、ピアノ、スイミングなどの習い事の支出額が含まれる「月謝額」について、2020年1月以降の増減率(前年同月比)を比較する。月謝額は大きくマイナスに動いた月が目立つのに対し、補習教育では小幅なマイナスの動きに加え、9月と10月では大きくプラスに動いている月も見受けらる。

この差は、前述の休校要請や分散登校、リモート授業による対面授業の減少などにより、コロナ禍以前とは異なる学校授業を補う役割を学習塾に求めたのに対し、習い事は外出自粛の観点から受講及び開講を控える傾向であったことから生じたと思われる。

対面授業とオンライン(リモート)授業の両立がカギに

 

学習塾業界ではコロナ禍を機に、従前の対面授業のほか、オンライン(リモート)授業などの新たな形態で授業をはじめる動きが見受けられる。

この動きは、外国語会話教室や料理教室など、これまで対面を基本として行われていた習い事の業界においても同様の傾向だ。

コロナを境に、オンライン(リモート)を活用(併用)した新しい形態のビジネスモデルが、学習塾を含む学習支援産業全体の景気活性化につながることを期待したい。

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