世界で加速する「核融合技術」商用化、巨額投資が流入
米核融合産業協会(FIA)と英国原子力公社(UKAEA)は、初となる核融合産業の共同調査報告書をまとめた。グローバルに展開する核融合関連の民間企業35社のうち23社が回答。うち12社が過去5年間に設立され、回答した23社だけで合計18億7200万ドル(約2130億円)もの資金を調達するなど、核融合技術の商用化に向けた動きが世界で加速している。(藤元正)
共同調査報告書「グローバル核融合産業2021」によれば、企業所在地別の回答は米国13社、英国5社、カナダ・独・仏・中・印・豪の各国がそれぞれ1社。日本企業はなかった。調査対象は核融合のコア技術を担う民間企業で、サポート産業は除いてある。
目標市場(複数回答)についての質問では回答の9割を超える22社が発電とした。また、半数近い11社が宇宙での推進動力源、8社が産業用熱源などを想定していると答えた。技術分野別では13社が磁場閉じ込め、5社が磁場慣性閉じ込めに取り組む。
回答した約7割の企業が2030年代に世界のどこかで送電網に接続した形での核融合発電が実現すると見込んでいるのに対し、約2割は40年代以降にずれ込むと予測。また、9割は30―40年代の段階で宇宙分野に応用されるとみている。
一方、回答した23社がこれまで調達した民間資金は17億8600万ドルで、政府の補助金などは8500万ドル(四捨五入の関係から合計額と一致しない)。中でも米コモンウェルス・フュージョン・システムズ、カナダのゼネラル・フュージョン、米TAEテクノロジーズ、英トカマク・エナジーの4社で民間資金の約85%を占める寡占ぶりが際立つ。
「核融合産業は今、エキサイティングな時代を迎えている」。報告書の冒頭にこうあるように、脱炭素の流れを受け、夢のエネルギーを生み出す先端産業に巨額の投資資金が流入し、業界全体が勢いづいている。同報告書ではこうした投資面に加え、核融合実用化に向けた政府による規制の枠組みづくりなどの支援も強調している。