「使用済み」大量発生に備えろ、リチウムイオン二次電池・リサイクル技術の今

持続的に資源循環

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開発したリチウムイオン伝導体(量研機構提供)

蓄電池として広く普及したリチウムイオン二次電池(LIB)。その原材料であるリチウムの需要は、電気自動車(EV)市場の拡大などに伴い、今後も急激に伸びると予想される。一方、2030年頃には初期のEVなどで使われたLIBが設計寿命を迎え、使用済み電池が大量に発生する。リチウムの全量を輸入に頼る日本にとり、使用済みLIBのリサイクル技術の確立は、需要増加分を賄うためだけでなく、持続的に資源を循環させる上でも喫緊の課題だ。(山谷逸平)

実用化は27年

「実用化の目安は27年。年間500トン規模の商業プラントを企業によって1基でも建造できることが目標だ」。量子科学技術研究開発機構(青森県六ヶ所村)の星野毅上席研究員は、使用済みLIBのリサイクルの展望をこう語る。星野上席研究員らは、使用済みLIBをリサイクルできる分離膜技術を16年に確立。21年1月に特許登録された。

実用化を目指して現在、出光興産やDOWAグループのDOWAエコシステム(東京都千代田区)と、使用済みLIBから超高純度のリチウム資源を回収する取り組みを推進。さらに、科学技術振興機構の事業に採択され、塩湖かん水でのリチウムの回収事業などで研究開発を進めている。

研究チームはEV市場の拡大を背景に、核融合炉の燃料作製に必要なリチウムの産業利用を思慮。セラミックス製のリチウムイオン伝導体を分離膜として使用する回収手法「LiSMIC(リスミック)」を14年に開発した。

16年にはリチウムを含む溶液を従来の中性からアルカリ性にして回収速度を上げるとともに、イオン伝導体の表面を改質処理することでリチウムイオンを流れやすくした。14年当初に確立した技術に比べ、回収速度を約200倍の1時間当たり1・8ミリグラム(年換算で15・8グラム)と大幅に向上させた。

星野上席研究員は「設備投資の少なさや短期間製造、薬剤費の大幅な抑制につながる。純度も高い」と、塩湖でのかん水法や鉱山からの採掘する方法に比べ、優位性があると強調する。

需給バランス

だが、事業化にむけて装置のスケールアップは大きなハードルだ。回収装置の中心部にあるイオン伝導体の大きさは現状5センチメートル角。実規模となると20センチ―30センチメートル角が必要となるため、製造方法の確立や装置自体の構造も検討課題だという。

海外のリチウム生産にも限界があり、量研機構は27―30年頃には需給バランスが崩れるとみて社会実装を急ぐ。量研機構は車載向けで25年には20年(予測値)比で3倍の約2600トン、30年には同9倍の約7500トンに需要が拡大すると試算。使用済みLIBのリサイクルなどで需要増加分を賄う必要性があるとする。

星野上席研究員は「不足する時期にあわせてリスミック技術を実現したい」と意気込む。リチウムの安定的な確保は、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)社会の実現に向けても重要だ。新産業の創成にも貢献でき、早期の実用化が期待される。

日刊工業新聞2021年7月26日

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