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経済の地盤沈下に一手、神戸市長が描く「三宮再開発」の道筋

経済の地盤沈下に一手、神戸市長が描く「三宮再開発」の道筋

JR三ノ宮駅。右端がJR西の新ビル予定地、中央奥がバスターミナルを含む新ビル予定地

1995年の阪神・淡路大震災以来滞っていた神戸市都心の三宮再開発は加速するか。10月31日の衆院選と同日に投開票された神戸市長選は、現職の久元喜造市長が3選。久元市長は新型コロナウイルス対策の継続とともに、三宮エリアなどの再開発の必要性を訴える。人口減少に伴う経済の地盤沈下に、神戸ならではの一手を打つ。(神戸・園尾雅之)

南北アクセス強化 企業誘致に弾み

10月上旬、JR西日本が三ノ宮駅前で計画中の商業ビルを29年度に開業させると発表した。駅周辺では西日本最大級のバスターミナルを備えた再開発ビル整備なども計画している。さらにウオーターフロントエリアでは商業施設の開業が続き、街の風景は刻々と変化する。

久元市長は「住み続けたいと思える街にすることが大事」と強調する。神戸は戦後の人口増加に伴い、六甲山麓などを宅地開発してきたが、近年は人口流出が顕著に進む。再開発計画の背景にはそうした現状への危機感がある。

産業界からの期待も大きい。神戸商工会議所の家次恒会頭(シスメックス会長兼社長)は、神戸空港、三宮エリア、新幹線の新神戸駅をつなぐ鉄道路線新設を要望。「南北アクセスを強化すれば企業誘致がやりやすくなる」とみる。ただ路線新設のハードルは高く、開発の方向性については議論の余地が多い。

神戸市は高度成長期に「株式会社神戸市」と称されるほど開発行政を推進。だが震災以降、復興事業で財政は圧迫され、大規模投資を控えてきた。そして攻勢に出ようとした矢先、コロナ禍に直面。対策に奔走する日々が続いていた。

コロナ禍が落ち着きを見せた今、本腰を入れられる環境がようやく整ったといえる。官民連携による都市計画の行方が注視される。

インタビュー/神戸市長・久元喜造氏 次世代型路面電車を活用

神戸市長 久元喜造氏

―再開発の狙いは。

「新しいビルに商業施設やオフィスを入れ、大企業を増やす仕組みを作る。ウオーターフロントエリアでは、企業の本社移転や商業施設の新設などが進む。そのアクセスを次世代型路面電車(LRT)で対応したい」

―地元産業界は、神戸空港とのアクセス強化を要望しています。

「神戸空港の国際化の時期は未定だが、それによって利用者が増えた場合、神戸新交通ポートアイランド線(ポートライナー)の輸送力では限界がある。代替となる大量輸送機関の構想はあるが、かなりハードルが高く、まだ勉強会の段階だ」

―人口減少の問題にどう対応しますか。

「多くの都市は高層マンションを林立させて人口を増やしたが、それが中長期的に見て本当に持続可能な方法だろうか。神戸はそうした道は選択しない。ポストコロナでは、多様なライフスタイルを提供できる都市が選ばれる。この数十年間、手を入れられなかった駅前を活性化させる」

日刊工業新聞2021年11月8日

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