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東大が発見、運転支援システムによる事故リスクを抑制する手法

システム過信・注意力低下防ぐ

東京大学の中野公彦教授らは、運転支援システムで自動車を走行中にドライバーの視界内に画像認識の結果を表示すると危険回避反応が向上することを発見した。運転をシステムに託すことでドライバーの注意力が散漫になると、システムでも対応しきれない時に反応が遅れて事故を起こすリスクがある。画像認識結果をヘッドアップディスプレー(HUD)に表示することでシステムも完璧でないと認識され、注意力の低下を抑えられる可能性がある。

運転支援システムがカメラで車両やバイクなどを認識した結果をHUDに表示する。どの車両は認識され、どの距離で認識できなくなるかといったシステムの限界をドライバーが見て体感できるため、システムへの過信を防げると考えられる。

運転シミュレーターで事故になりそうな場面を再現したところ、HUDで画像認識結果を表示した場合と非表示の場合では、ドライバーが危険に気づいてハンドルを切るといった介入の反応が早くなった。介入時点での車間距離は表示した方が3割ほど長くなった。

ドライバーの主観評価では、完璧でない画像認識結果が表示されると「システムは未体験のリスクを認識できない」と考えるドライバーが多かった。システムへの過信を防ぐ効果が期待できる。

より高度な運転支援システムが広がると、運転が楽になる一方でドライバーがシステムを過信するリスクも出てくる。過信した状態でヒヤリハットなどを経験するとシステムへの不信に転じる可能性がある。

今回の研究はドライバーがシステムを理解し、信頼する基礎的な知見になる。

研究は内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」で実施された。

日刊工業新聞2021年11月4日

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