カーエレ各社が繰り広げる「デジタルコックピット」開発競争の行方

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ホンダのEV「ホンダe」は、前面に五つのスクリーンを水平配置している

カーエレクトロニクスメーカー各社が、デジタルコックピットの開発を活発化している。カーナビゲーションやカーオーディオといった既存事業での差別化が難しくなる中、これらの事業で培った画像や音に関する知見を生かせるとみて攻勢をかける。自動運転の進展などにより、車内で過ごす時間の価値が注目されている点を追い風に、運転席だけでなく、車室全体をデジタル化する提案にも乗り出している。(江上佑美子)

デジタルコックピットの特徴は、ディスプレーと音声認識だ。従来は針を用いていた速度表示などをデジタル化。オーディオや空調の操作もディスプレー上で可能にした。スイッチやつまみではなく、スマートフォンのように指先で直感的に操作でき、表示内容は必要に応じて切り替えられる。また音声で空調などの操作を可能とし、ドライバーが運転中に視線を前方からそらす時間を減らせるようにして、利便性や安全性の向上に寄与する。

ホンダが2020年に発売した電気自動車(EV)「ホンダe」は前面に五つのスクリーンを配置。車速や航続可能距離のほか、電話や音声アプリなどのコンテンツを選んで表示できる。人工知能(AI)による音声認識機能も搭載した。

今後、EVや高級車を皮切りにデジタルコックピット搭載車が増える見込みで、カーエレ各社は開発を急ぐ。

パイオニアは車載の対話型AIを手がける米セレンスと連携し、音声で高度な操作ができる機器を22年に投入する予定だ。高島直人取締役常務執行役員は「当社が得意とする『音』を生かす」と説明する。

また独コンチネンタルともデジタルコックピット分野で協業した。コンチネンタルの開発した高性能コンピューターに、カーナビなどのソフトウエアを提供。24年の実用化を見込む。高島取締役は「必要なパッケージを柔軟に入れ込むことができるため、開発スピードを高められる」とメリットを語る。

フォルシアクラリオン・エレクトロニクス(FCE)はスピーカーやマイクを内蔵し、乗員が個々に好きな音楽を楽しめるオーディオヘッドレストなどの開発に取り組む。仏フォルシアのシート部門の知見を融合しており、岩井崇尚取締役は「運転席だけでなく、車室全体をデザインできるのが当社の強み」と説明する。

またソフトウエアが車の価値を定義する「ソフトウエア・ディファインド・ビークル(SDV)」の動きが進む中、ソフトを自動更新するOTA(オーバー・ジ・エアー)を活用し、運転の快適性を向上するアプリケーション(応用ソフト)提供にも注力する。

アルプスアルパインは運転席だけでなく、車室全体をデザインする「デジタルキャビン(客室)」事業を掲げる。天井に大型ディスプレーを配して映像を楽しめるようにしたり、拡張現実(AR)を活用して周辺の情報を窓に表示したりといった技術を提案する考えだ。渡辺好勝執行役員は「自動車の大変革期に、強みを生かす」と意気込む。

車内環境が着目される背景にあるのが、自動運転とコロナ禍だ。自動運転では、従来と比べて人が運転に集中する必要がなくなる。またコロナ禍で、不特定多数との接触を避けられる個室としての価値を車に見いだす人が増えた。こうした理由で車を選ぶ際、車内環境を重視する消費者が増える流れにある。

米グランドビューリサーチの調査によると、自動車用デジタルコックピットの世界市場は年平均8・8%の成長率を示し、28年には361億ドル(約4兆円)に達する見込みだ。いち早く主導権を握るため、カーエレ各社の開発競争はいっそう熱を帯びそうだ。

FCEは個々の乗員に合わせたコンテンツ提供が可能な車内情報システムの構築を目指す(イメージ)

日刊工業新聞2021年9月21日

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