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「みつろうラップ」で大反響、販促物を企画・販売する中小企業がたどり着いた理由

「みつろうラップ」で大反響、販促物を企画・販売する中小企業がたどり着いた理由

水洗いで繰り返し使えるみつろうラップ

冷蔵庫の中で丸まった包みを解くと、タマネギが入っていた。包んでいたシートは厚みがあってプラスチック製と思ったが、違った。ミツバチの巣に含まれる蜜蝋(みつろう)を塗った綿でできている。

色鮮やかで冷蔵庫の雰囲気も変えてくれる。このシートは高孝物産(東京都中央区、高橋孝雄社長)が4月にオンラインで発売した「みつろうラップ」だ。水洗いができ、繰り返し使える。食品を保存するラップフィルム代わりに使うと、プラスチックゴミを減らせる。また蜜蝋には抗菌性や保湿性があり、野菜などの鮮度を保つので食品ロスも抑制できる。

同社は企業から依頼を受けて販売促進物を企画、販売する。2021年に会社設立50年を迎えたのを機に持続可能な開発目標(SDGs)に取り組みたいと考え、「小さなアクションでも地球に良いことをしたい」(高橋かおり専務)と方向性が固まったという。

ちょうど顧客企業から販促品に環境に配慮した素材を採用するように求められていた。新規事業開発部の吉兼久美子マネージャーは「自分たちでもやろうと思い、消費者向けブランドの立ち上げることにした」と説明する。そして「環境に貢献したいと思っている生活者に手に取ってもらえる商品」をコンセプトに、みつろうラップを商品化することにした。ブランド名は「A Little Something」だ。

刻んだ野菜も保存できるみつろうバッグ

袋型の「みつろうバッグ」も企画した。刻んだ野菜などを入れて保存できる。蜜蝋を塗った布は通常のミシンでは縫えないが、同社は縫製方法を確立して実用新案を取得した。生産を委託した国内工場では「女性従業員が共感し、作り方を提案するなど能動的に協力してくれた」(高橋専務)と感謝する。

展示会などでみつろうラップ・バッグを紹介すると、反響が大きいという。顧客企業からも依頼があり、OEM(相手先ブランド)生産も始める予定だ。環境課題の解決がヒントとなり、新規事業を創出した好例だ。

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日刊工業新聞2021年10月8日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
食品ラップは何十メートルもあり、スーパーで特売品にもなることもあるので、資源としての価値に気づきにくいです(少なくとも私は)。なので、使い捨てても罪悪感がなかったです。みつろうラップ、プラスチックフイルムは「どっちが便利?」みたいな議論をする人がいますが、どっちが良いかは消費者が決めることと思います。

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