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進化するマンションの「VR内覧」、リアリティ訴求で不動産会社があの手この手

進化するマンションの「VR内覧」、リアリティ訴求で不動産会社があの手この手

日鉄興和不動産の3次元・実物大のVRシアター、窓からの眺望もリアルに再現する

分譲マンションの物件情報を提供するマンションギャラリーで、仮想現実(VR)技術の活用が進んでいる。日鉄興和不動産は床面と壁2面に発光ダイオード(LED)パネルを設置し、間取りの画像を投影して3次元かつ実物大での「VR内覧」を実現。東急不動産は人の眼と同等レベルとされる高解像度のVRヘッドセットを採用したモデルルームを導入する。顧客にリアリティーを感じてもらい、購入につなげる狙いだ。(大城麻木乃)

日鉄興和不動産は9日に開業する上野のマンションギャラリーにVR内覧システムを設置する。コロナ禍でVR内覧は増えているが、狭い部屋などでVRを体感する場合が多い。同社は延べ床面積が約23平方メートルの実物大のリビング・ダイニングの広さいっぱいにVR画像を投影し、「より完成後のイメージをつかんでもらう」(販売推進グループ)作戦だ。

通常、マンションギャラリーはマンション1棟につき一つ開設することが多いが、このギャラリーでは6棟を紹介。うち、1棟は1DKから3LDKまでの10タイプの間取りをVRで再現する。顧客にとってはワンストップで多くのマンション情報が得られ、効率的に情報収集できる利点がある。

東急不動産はフィンランドの企業が開発した医療現場でも使われる超高解像度VRヘッドセット「ヴァルヨXR―3」を採用。16日に開業する大阪市本町のマンションギャラリーに導入する。同ヘッドセットにより細部までクリアに画像を見られるほか、従来はマンションのコンピューターグラフィックス(CG)画像だけだった再現内容を、実物の営業担当者も映し出される仮想と現実が融合したVR画像にバージョンアップした。同社はより没入感を深められるとみている。

大京は東京・蔵前に開設したマンションギャラリーに蔵前の町並みを紹介するミニシアターと、マンションを説明するミニシアターの二つを導入。さらにVRで完成後のマンションを内覧できる空間も設けた。さまざまな映像を駆使して、マンション購入後の生活を疑似体験してもらう狙いだ。

VRを使った新たな試みは、話題性からまずは顧客にマンションギャラリーに来てもらう効果も見込める。今後、各社はさらにデジタル技術を活用し、独自の工夫を凝らすことになりそうだ。

日刊工業新聞2021年10月8日

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