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マクセルが持ち株会社制解消で創出狙う「内」なるシナジー

マクセルホールディングス(HD)は10月1日付で持ち株会社制を解消する。マクセルHDを存続会社として事業会社のマクセルを吸収合併し、その上で社名をマクセルに変更。中核事業会社としてグループをけん引する。M&A(合併・買収)で取得した会社をHD傘下に置き拡大路線を進めてきたが、「グループ内でのシナジー創出が重要な段階に入った」(中村啓次社長)ため体制を見直す。事業部やグループ会社の枠組みを超えた取り組みで、「次」につながる製品や技術を育てようとしている。

マクセルHDが持ち株会社制に移行したのは2017年。「外部の企業や事業を取り込み、規模や保有技術の拡大を図るため」(中村社長)、迅速な意思決定ができるメリットを重視し持ち株会社制を選んだ。実際、18年度には家電・電設工具の泉精器製作所(現マクセルイズミ)など5社を合計約340億円で買収。日立のリチウムイオン電池事業の取得で車載用電池への参入も果たした。

一方、買収による急速な規模拡大は「組織の枠を超えたシナジーが発揮しにくい」(同)事態も招いた。各グループ企業が違う方向を向いた、一体感を欠いた組織が固定化しないためにも「これからは『内』のシナジーを発揮し、成長の種を自分たちで育てていく必要がある」(同)とし、主力事業である電池や磁気テープの製造販売を営むマクセルがグループ企業を束ね、進むべき方向性を鮮明に打ち出していく。

既にマクセルでは、事業部ごとに分かれていた営業・マーケティング機能を集約したり、全固体電池など大型の開発テーマを全社で一元管理したりするなどの取り組みを4月に始めた。情報を全社で共有できれば、よりスケールの大きなビジネスや将来を見越した開発につながる可能性が高まる。

開発では全固体電池の課題に電池以外の部門の技術者が提案する場面が見られるなど、「少しずつだが一体感が生まれている」と中村社長は手応えを感じている。

日刊工業新聞2021年9月27日

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