24年に実機稼働へ、CO2を排出しない水素製造システムの仕組み

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戸田工業とエア・ウォーターは、天然ガスの主成分であるメタン(CH4)から二酸化炭素(CO2)を排出せずに高効率に水素を製造するシステムの開発を始めた。都市ガスをメタン源とし、メタン改質と同時に作る多層カーボンナノチューブ(CNT)の販売と合わせ、水素供給コストを下げる。2024年には実機を稼働する。政府目標より20年早い30年に、水素のプラント引き渡しコストの1立方メートル当たり20円を目指す。(広島・水田武詞)

開発は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の公募事業に採択された。研究開発期間は21―22年度の約2年。事業予算は8000万円。高活性鉄系触媒を使ったメタン直接改質法(DMR法)を用いる。

現状の副生水素精製、天然ガスの水蒸気改質はCO2が発生する。「研究の主目的は既存水素サプライチェーンの早期クリーン化。できるだけ早く社会実装したい」(エア・ウォーターの末長純也産業・エネルギー・ガスオペレーション開発最高技術責任者〈CTO〉)としている。

戸田工業のDMR触媒の調整技術、DMR反応技術とエア・ウォーターのガス精製技術を用いる。水素製造は、DMR専用触媒と原料のメタンガスを回転式DMR反応炉の中に連続的に導入する。

反応炉の温度は600―750度Cに保持。反応炉中で触媒とメタンガスが接触反応し、水素とCNTが生成され、触媒とCNTを連続的に排出し回収する。水素は水素濃度70%以上。水素精製装置で水素回収率85%以上、水素濃度99・99%以上を目指す。

戸田工業が設計する触媒は鉄を主体とした主触媒と、アルミニウムなどを主体した助触媒とを混ぜる物理的混合法であり、ある程度の触媒活性は得られている。今回は水素と高導電性のCNTを同時に製造。水素濃度70%以上は難しくはないが、「CNT高性能化には工夫が必要」(松井敏樹次世代事業ユニット副事業部長)。

助触媒の表面に主触媒を含浸担持させる方法や、主触媒と助触媒の成分を湿式合成して固溶体にする方法を検討する。CNTは競合品との差別化、高付加価値の用途開発や販路開拓も必要になる。

一方のエア・ウォーターは、純度99・99%以上の水素を高効率に精製するプロセスを確立する。同社の水素発生装置でも採用している吸着分離技術に加え、膜分離も使い運転条件を最適化する。

開発は主に戸田工業の大竹事業所(広島県大竹市)で実施。パイロットスケールの水素精製装置の設計・導入とDMR反応炉により触媒設計、反応条件、炉体構造を検討。システムを統合し、100時間以上の連続実証試験を実施。24年度の実機稼働の詳細は未定だが、10億―20億円の投資を見込む。反応炉にメタンを毎時140立方メートルに投入すると、同量の水素ができ、CNTは1日に1トンできる見込み。25―26年頃に、再生可能エネルギーなどを反応炉に使い、CO2を排出しない水素製造を実現する計画だ。

日刊工業新聞2021年8月23日

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