特許係争、オンラインでの口頭審理が可能に!
特許係争の現場にデジタル技術が導入される。特許庁の審判廷で行われる特許係争の案件に関し、10月1日からオンラインでの口頭審理が可能となる。訴える側である請求人と訴えられた側の被請求人に対し、オンラインでの参加を認めるのは特許庁の審判廷と裁判所の法廷を通じて日本では初めての試み。オンラインでの参加を認めることで、遠方にいる特許係争の当事者の利便性を向上させる。
特許法では競合する技術を持つ企業などの利害関係者が権利の無効を申し立てる「無効審判」の制度を設けている。
無効審判は当事者による口頭でのやりとりで行い、審判の請求人と特許権利者である被請求人の双方が各自の主張をぶつけ合う。双方が主張を尽くした上で、権利の有効性を3人の審判官が判断する仕組みだ。
この際に請求人と被請求人は審判廷に出頭し対面での口頭審理を受ける必要があった。「審理では双方の意見を出し尽くさせる必要がある。技術の議論をぶつけ合うので書面の審理だけでは難しい」(特許庁担当者)ことが主な理由だ。
だが、新型コロナウイルス感染症によって状況は大きく変化した。特許庁では口頭審理を開けないケースもあり、オンラインでの口頭審理を望む声が挙がった。
さらに当事者の表情や声などが良く分かるほどに通信映像の性能が上がったこともオンラインでの口頭審理の導入を後押しした。世の中のデジタル化の流れで、在宅や地方の当事者が審理に参加しやすくなり、当事者の利便性が向上することが見込まれる。
10月中に特許の無効審判の案件が6件ほどあり、その中でオンラインによる口頭審理が実施されることになりそうだ。
日刊工業新聞2021年9月24日