筋ジストロフィー「6型コラーゲン」で病態改善。京大が実用化へ
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の竹中菜々研究員と桜井英俊准教授らは生まれた直後から筋力が低く、関節が正常に動かなくなる疾患「ウルリッヒ型先天性筋ジストロフィー(UCMD)」に、細胞移植で原因たんぱく質「6型コラーゲン」を補うことで病態改善につながるとモデルマウスで示した。今後、運動機能改善や全身投与による筋肉の再生などの検証を行い、実用化を目指す。
全身投与で筋肉再生検証
研究グループはiPS細胞(人工多能性幹細胞)から骨格筋を維持する「間葉系間質細胞(MSC)」を作製した。実験では6型コラーゲンを持たないUCMDモデルマウスに健康なヒトの骨格筋から採取したMSCや、健康なヒト由来のiPS細胞から作ったMSCを移植。2週間後に検出した6型コラーゲンが12週間後にも維持でき、細胞移植で6型コラーゲンが補えることが分かった。
その後、24週間後には移植した細胞自体はほとんど残らなかったが6型コラーゲンは残存した。移植細胞の増殖による腫瘍化リスクを回避した上で、6型コラーゲンの補充ができると示唆された。
また、移植1週間後の筋線維はモデルマウスと比べ成熟し、横断面積が約3倍太くなった。筋線維の元となる筋芽細胞の増殖促進もみられた。
6型コラーゲンを分泌しないMSCを移植した場合は効果がなく、6型コラーゲンの補充で初期の筋細胞である筋管の成熟や筋芽細胞の増殖が進むことが分かった。
一方、効果は移植した部位のみでみられるため、実用化に向けて全身投与による検証が必要。
さらに運動機能改善の効果確認指標の開発も進める。
日刊工業新聞2021年8月25日