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コロナ禍で業績悪化、JALの財務戦略と重視する事業

自己資本比率の改善急ぐ

日本航空(JAL)が財務基盤の再構築を進めている。コロナ禍で業績が悪化するなか、当面はビジネス需要が戻らないと見込む一方、観光需要を取り込むため格安航空会社(LCC)事業を重視。フラッグシップをボーイング777から燃費の良い最新鋭のエアバスA350に更新して競争力を高めるなどし、自己資本比率の改善や2020年度は無配となったため早期の復配といった株主還元などに取り組んでいく。

ここ数年、自己資本比率50%台を維持していたJALだが、20年9月末時点で43・6%まで落ち込んだ。悪化したとはいえ、財務基盤の安全性に問題はないものの、昨秋には06年以来となる公募増資で約1800億円を調達。このうち、約1000億円をエアバスA350への更新やLCCの強化といった航空機向け投資などに、残りは有利子負債の返済に充てる。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の土谷康仁シニアアナリストは「20年度は(コロナ禍で)どれだけ赤字になるか分からない状況だった。自己資本の厚みを意識する中で慎重に考えたのではないか」と指摘。実際、JALの木藤祐一郎財務部長は「後手に回ると財務の選択肢が狭まってしまう。ポストコロナを見据え、反転攻勢の手を打っておく必要がある」と説明する。

20年度期末の時点で有利子負債は約5151億円(19年度期末は2774億円)に膨らんだものの、現預金で約4000億円を保有するほか、未使用のコミットメントライン(融資枠)約3000億円を確保して手元流動性を高めている。

効率化や生産性の向上を図り、実質固定費の削減も進める。「23年度までに財務の再構築を進めて自己資本比率を50%台まで戻したい」と木藤財務部長は強調する。

5月に公表した25年度までの中期経営計画では市場変化に対応しつつ、財務基盤の再構築や成長投資をしていくとした。23年度には本業のもうけであるEBIT(利払い・税引き前利益)で約1700億円、25年度には約1850億円規模を目指す。航空以外の成長戦略の一つとしてマイルを軸としたパートナー提携、金融や物販などによるマイレージ・ライフスタイル事業の拡大など、事業構造改革を進めていく。

日刊工業新聞2021年7月15日

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