都市ゴミから水素や燃料を製造する。伊藤忠が出資した米ベンチャーの正体
伊藤忠商事は都市ゴミから水素や燃料を製造する技術を開発する米国のベンチャー「Raven(ラヴェン)SR」に米石油メジャーなど3社と共同出資した。伊藤忠の出資額・比率は非開示だが、出資総額は約2000万ドル(約21億円)。出資を通じ、将来的にグアムなどで都市ゴミ由来の水素や燃料の製造販売を目指す。
ラヴェンは電気を使って都市ゴミを加熱し、水素と一酸化炭素の合成ガスを製造する技術を開発する。合成ガスの一酸化炭素はCCS(二酸化炭素〈CO2〉の回収・貯留)技術で除去できる。水素のみを取り出せるほか、ガスから燃料を作ることも可能。これまでゴミから水素や燃料を効率的に作ることは難しかった。
同社は米カリフォルニア州で燃料電池車(FCV)向け水素の製造を始めており、伊藤忠などから出資を受け、2022年後半をめどに水素製造プラントを設置する予定。
伊藤忠はディーゼル燃料などのディストリビューター事業を展開しているグアムやサイパンで水素の製造販売を検討する。水素を利用したSAF(持続可能な航空燃料)の開発も目指す。これまでフィンランド・ネステからSAFを輸入してきた。ネステは非可食性の動植油脂などの廃食油を原料として航空燃料を製造する。
伊藤忠の田中正哉執行役員エネルギー・化学品カンパニープレジデントは「都市ゴミを燃焼させると化石燃料を消費する。燃焼させずに水素や燃料を取り出すことができれば環境負荷を下げられる」としている。
総合商社は脱炭素につながる燃料の確保や調達を急ぐ。三井物産は米社への出資を通じ、工場の廃ガスからエタノールを作る事業を中国で進める。丸紅は廃棄プラスチックを原料とする航空燃料について日本航空(JAL)と事業性評価に取り組む。
日刊工業新聞2021年8月23日