東芝・富士通・VAIO、パソコン事業統合交渉か?3者それぞれの事情
東芝、西田元社長が退き聖域なくなる
日刊工業新聞2015年7月30日付の記事を一部修正
東芝のパソコンシェアは、2014年の出荷台数ベースで4%。その内訳は売上高比率で個人向けが7割、法人向けが3割だ。価格競争や在庫調整などによる、個人向けの収益悪化が赤字を招いた。
これまでにも手は打ってきた。13年度は人員の配置転換を実施。14年度は国内外で900人のリストラを行い、販売拠点を先進国に絞り込んで32カ所から13カ所に減らした。16年度に収益性の高い法人向け売上高比率を5割以上に引き上げ、改善を図る方針だ。ただ東芝の4倍以上のシェアを持つ中国レノボや米ヒューレット・パッカード(HP)も、法人向けを強化。競争激化は避けられない。
【個人向け撤退も】
不適切会計問題が片付かないうちは、法人向けの入札案件にも影響が及ぶ。個人向けの不振とのダブルパンチで収益性がより悪化する恐れがある。投資の選択と集中の必要性が高まる中、個人向けからの完全撤退も視野に入れるべきだろう。
ガートナージャパンの蒔田佳苗主席アナリストは、生き残り策を「ヒントはこれまでの蓄積にある」と見る。例えば米IBMと手がけるパソコンの不調診断システム。「故障予知サービスのように、製品販売後もサービスで稼げるビジネスモデルができれば差別化できる」。製品の売り切りから脱却し他の事業との相乗効果を高めれば、収益の改善につなげられる。
【こだわりは疑問】
また別のアナリストは「将来スマートメーター(通信機能付き電力量計)が普及すれば、パソコンで培ってきた技術が役立つ」と話す。しかし「『キーボード+ディスプレー』という形にこだわる必要があるかは疑問だ」と指摘する。
業界では「10年ほど前から再編の動きが出つつあり、大手プレーヤーは絞られつつある」(蒔田主席アナリスト)。他事業との相乗効果も見いだせなくなれば、事業売却も一つの選択肢だ。
パソコン事業の出身で経営に大きな影響を与えていた西田厚聰前相談役が退いた今、同事業の構造改革をしやすくなった側面はあるだろう。思い切った経営判断による方向転換が、再建への近道だ。室町正志社長はすでに事業売却や他社との共同出資による方法で東芝グループから分離させる方向を表明している。