コロナ対策で脚光の「UV照射技術」。学術的評価が高まる
富士通ゼネラル傘下のエアロシールド(大分市、木原寿彦社長)が保有する紫外線(UV)照射技術が、新型コロナウイルス感染症対策として専門家から注目されている。UVを天井付近に水平照射し、空気の対流で照射野に運ばれてきたウイルスを不活化する独自技術を、米疾病対策センター(CDC)が推奨する立場を示すなど学術的な評価が高まっている。ウイルスの空気感染を防ぐ策として、消費者の関心も呼びそうだ。(編集委員・宇田川智大)
エアロシールドのUV照射装置は、UVの進路を制御する羽板の働きで、UVの中でもウイルスや菌を除去する効果が大きいC波を水平方向にだけ照射する。天井付近に設置すれば室内上部にUVの層ができ、空気の対流でこの層に運ばれてきたウイルスや菌を減らす。照射野が上層に限られるため、人体には影響しないという。
新型コロナウイルスのデルタ株で、エアゾール感染への警戒が強まっているが、通常の空調設備だとCDCや世界保健機関(WHO)が必要だと指摘する換気量の基準を満たすのは容易でない。CDCは換気量を増やす手段が限られている場合の代替策として「室上部照射の紫外線殺菌照射システム」を推奨する見解を6月に公表した。
これに1年先立つ2020年6月には米国医師会の会誌「JAMA」でも、室内上部へのUV照射の有効性を指摘する文献が紹介された。室内空気の消毒には1時間に6―12回の換気が必要なのに対し、室内上部へのUV照射は換気を1時間に24回行うのに匹敵する効果があるという。
UVの水平照射の効果は、20年に奈良県立医科大学と行った共同実験で実証済みだ。新型コロナを塗布したシャーレに28センチメートルの距離から、約2分間で1平方センチメートル当たり累計50ミリジュールのUVを照射したところ、ウイルスを99・95%不活化した。空気の対流を利用する実際の使用環境とは条件が異なるものの「空気感染の防止に有効である可能性を示した」(木原社長)としている。
UV照射装置「エアロシールド」は医療・介護施設や食品工場などで8000台以上使われている。先ごろ親会社になった富士通ゼネラルのエアコンと組み合わせ、清潔で安全な空間づくりに一段と力を注ぐ考えだ。