被災地の様子をリアルタイムに解析へ。Specteeが開発
Spectee(スペクティ、東京都千代田区、村上建治郎最高経営責任者〈CEO〉)は、人工知能(AI)を活用することで災害被害地域の様子をリアルタイムに解析し、浸水範囲などを地図上にシミュレーション・表示する技術の開発を進めている。近年、異常気象や気候変動に対する危機感が高まっている。情報解析により防災や減災につながる緊急情報の提供や予測を行い、被害状況を可視化することで災害対応の迅速化に役立てることを目指す。
SNSに投稿
スペクティは一般人がツイッターやフェイスブックといった会員制交流サイト(SNS)に投稿した画像などのビッグデータ(大量データ)をAIが分析し、気象や災害、事件の情報の重要性や真偽、正確な発生場所を判断し、リアルタイムに配信するサービス「Spectee Pro」を提供している。
同社が現在、開発を進めているのが「AIによるリアルタイム浸水推定技術」だ。村上CEOは「AIによる再現結果について精度検証を行っている。一定の精度が確立できた段階で提供を予定している」と意気込む。
同技術はSNSに投稿された画像や河川カメラ、道路カメラの映像から浸水深を瞬時に割り出し、降水量、地形データなどと組み合わせて統合的に解析するもの。発生から10分以内に浸水範囲と各地の浸水深を自動推定し、地図上にシミュレーションする。
いち早く把握
重要なのが、台風や集中豪雨など近年多発する水災害において、災害発生時に被害状況をいち早く把握することだ。7月上旬、大雨による災害が日本列島を相次いで襲った。3日は神奈川県平塚市を流れる金目川とその支流などで氾濫が発生、10日は鹿児島県薩摩川内市を流れる川内川とその支流で、12日は島根県出雲市を流れる稗原川で氾濫が発生し、浸水・冠水による被害をもたらした。
SNS投稿画像
スペクティはSNSに投稿された画像をもとに、浸水の推定範囲および深さを解析。河川の氾濫直後に、ほぼリアルタイムに浸水範囲と浸水深を推定し、2次元(2D)と3次元(3D)の地図上に再現した。神奈川県の氾濫では、作成した浸水推定図から平塚市内と周辺の川沿いを中心に広範囲で浸水があったことが可視化できる。
AIによるリアルタイム浸水推定技術の今後の展開について、村上CEOは「自治体のみならず、工場やサプライチェーンを抱える企業、物流などを持つ企業、その他、交通インフラ、電力・ガス会社などへの提供を想定している」としている。(山下絵梨)