マウス精子をシートに保存する技術。山梨大学が開発
山梨大学大学院の伊藤大裕大学院生と若山照彦教授らは、凍結乾燥したマウスの精子を薄いシートに挟んで保存する技術を開発した。シートを真空に近い状態で圧着する方法を採用。はがきにシートを貼り付けて他の研究機関に郵送できる。シートに挟んだマウスの精子を1冊のアルバムに収め、マイナス30度Cの冷凍庫に3カ月間保存した精子から健康な子マウスを得ることができた。実験用マウス精子の輸送費削減のほか、効率的に保管できることが期待される。
研究グループは破損の可能性がなく、大量保存できる方法として薄いプラスチックシートを使って凍結乾燥したマウスの精子を保存する技術を開発した。薬包紙で凍結乾燥した精子を挟み、それをプラスチックシートでさらに挟み、真空に近い状態で圧着した。
保存可能な温度と期間を調べたところ、マイナス30度Cの冷凍庫であれば3カ月間保存しても健康な子マウスが産まれることが分かった。シートをアルバムに収納した状態でも同様の結果が得られた。数百種類にも及ぶマウス系統の精子をアルバムに収めて冷凍保存できる可能性を示した。常温でも3日間であれば問題なく子マウスを得られた。
シート保存した凍結乾燥精子をはがきに貼り付けて郵送する実験も行った。山梨県内や千葉県から山梨県の送付先に届いた精子から健康な子マウスが産まれた。出産率は郵送せずに研究室で常温保存しておいた精子と差がなかった。
一般的に実験用マウスや家畜の精子は液体窒素タンクや超低温の冷凍庫で凍結保存される。だが、維持費がかかるほか、地震などで停電すると凍結精子が溶けて利用できなくなる課題があった。
日刊工業新聞2021年8月6日