赤字続く楽天の携帯通信事業。「仮想化」の海外展開で早期黒字化なるか
「RCP」の外販推進
楽天グループは通信機器をクラウドに置き換え、通信ネットワークの整備、運用コストを低減する「仮想化」と呼ばれる通信技術の海外展開を加速する。第1弾としてドイツの通信事業者である1&1への提供が決まったほか、海外展開促進に向けた事業組織も発足した。国内の携帯通信事業で用いる仮想化ネットワーク基盤「RCP」の外販を進め、収益力向上を目指す。(苦瓜朋子)
「日本での通信サービス、(自社経済圏の)楽天エコシステム、そしてRCP。一石三鳥だ」。三木谷浩史楽天グループ会長兼社長は5日開いた説明会で、自社のネットワーク仮想化技術についてこう自信をみせた。
傘下の楽天モバイルは2020年に携帯通信事業に本格参入し、自社で開発した仮想化ネットワーク技術を活用している。同年にネットワーク運用技術に強みを持つ米イノアイの買収計画を公表し、4日には楽天グループが米アルティオスターの完全子会社化を発表した。RCPの海外展開に向けて、開発体制を強化してきた。
今回、自社回線による通信サービスの提供を目指す1&1が世界で初めて全面的にRCPを採用した。楽天グループは契約期間である30年頃までの約10年間で数千億円規模の売り上げを見込む。
また、アルティオスターやイノアイなどグループ企業が持つ通信技術やサービスを集約し、新事業組織「楽天シンフォニー」を始動した。三木谷会長兼社長がチェアマンとして事業組織をリードし、世界の通信事業者や政府機関に技術の輸出を急ぐ。三木谷会長兼社長は海外展開について具体的な目標数値を示さなかったものの、「小規模にとどまるつもりはない。大きなマーケットシェアを狙っていく」と意気込む。
傘下の楽天モバイルが手がける携帯通信事業は、自社経済圏の拡大に貢献する一方、基地局建設や販促といった先行投資が重荷となり赤字が続く。また、月額料金を月間データ容量1ギガバイト(ギガは10億)まで無料としており、国内事業だけでは収益を上げづらい。早期の黒字達成には、他の国内携帯大手に先駆けてどれだけ通信技術の海外展開を進められるかが問われる。